中・高と吹奏楽部に所属していました。また、佐渡裕さんの指揮の下、シンフォニーホールで、合唱団員として歌った経験もあります。このCDをいろいろな期待を込めてじっくりと聴きました。 交響楽団が上で、ウインド・オーケストラが下、という序列を持っておられる方がいますが、楽器群の構成の違い、音色の差違、音圧即ち音の迫力、といった個性をもう少し考慮して聴いてみると新たな音楽世界の広がりとして理解できます。佐渡裕のねらいもそのシエナ・ウインド・オーケストラの特徴と個性を引出すことにあると感じました。 まず、シエナ・ウインド・オーケストラの技術水準に感心しました。パートバランスも、しっかりしていますし、とてもよく鳴っています。ウインド・オーケストラ特有の部厚い密集和音は、音楽が進むにつれ万華鏡のように変化していきます。若さ溢れる演奏者集団ですので、佐渡裕のめざす音楽性ととても相性が良い感じがしました。 ジョン・バーンズ・チャンス作曲の『朝鮮民謡の主題による変奏曲』を始めて聴きましたが、良い音楽ですね。有名な「アリラン」の旋律をモティーフにして、アメリカ人が見た、東洋のイメージがよく出ていて、印象に残りました。交響楽団でティンパニー奏者を務めていた作曲者ですので、途中木魚まで入っているパーカッションの多彩さはこの曲の特徴なのでしょうね。シエナ・ウインド・オーケストラのとても洗練された演奏と共に、気に入りました。 佐渡裕の師匠であるバーンスタイン作曲の『シンフォニック・ダンス ウェスト・サイド・ストーリーより』も、破綻のない立派な音楽でした。アンサンブルの高水準を確認した思いですが、もう少し荒くはじけても良かったかなと思います。クラシック・テイストではなく、ジャズ・テイストの曲ですから、もっともっと躍動感があると原曲の持つ味わいと個性が引き立つように感じました。もっとも、この演奏もアマチュア・バンドのお手本となるのには違いありませんので。 ラストの『星条旗よ永遠なれ』のアンサンブルは流石でした。正統派の演奏で、今まで聴いた演奏の中で一番良かったと思いました。フルート奏者だった佐渡裕の思っている『星条旗よ永遠なれ』を聴かせてもらった感があります。繰り返しの後の演奏は、天国のスーザに聴いてもらいたい感じがしましたね。
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