日本で最も有望なガス田は関東平野の地下にあるそうである。 そういえば、渋谷松濤のスパの爆発も地下から自噴するガスの未処理が原因だった。 この利用が進まないのは都市直下で地盤沈下の危険があるからだそうである。 海底に存在するメタンハイドレートも、日本近海にはたくさんある。 それが使えればレアメタルやレアアースも取れるであろう。 それはいいのだが、地震への影響とかはないのだろうか。
著者は、東大の先生で、本書は「真面目な本」です。92ページしかないし、パンフレットみたいな本です。 曰く・・ メダンハイドレートとは、水分子がつくるカゴの中にメタンなどのガス分子が閉じ込められた氷状の物質。水分子のカゴの中にメタンなどちょうどよい大きさの分子が入ることで安定した結晶構造を維持できる。資源量は天然ガスの2〜10倍と推定される。 密度は氷とほぼ同じで水よりも軽い。海底から放出されると、溶けながら海面まで浮き上がってくる。 メタンハイドレートは(1)微生物分解起源と(2)熱分解起源の2種類。(1)は、動植物の死骸がバクテリアによって酸化分解され、更に、メタン生成菌によって食べられることで生産されるメタンであり、(2)は、地中奥深く埋没した有機物が地熱によって無生物的に分解されるメタンである。(1)は、海底下200〜300メートルに偏在し、(2)は、海底下3000〜4000メートルに局在する。 海域のメタンハイドレートは、大陸縁辺に多く(有機物が流れ込みやすいので)、陸から離れるとほとんどない。低温高圧環境に多い(陸地なら永久凍土地帯に多い)。 二酸化炭素削減のためにも天然ガスの需要は高まる。日本は世界一高い天然ガスを買っている。まず、供給地である中東や東南アジアにまでパイプラインをひけないという地理的不利がある。船で運ばざるをえないが容積を下げるためマイナス162℃にまで液化する必要があるため更にコスト高となる。しかも、中東や東南アジアは気温が高い。日本近郊のメタンハイドレートはその意味でも期待されている。 メタンハイドレートのあるところでは、地震波の伝わる速度が速い地層と遅い地層が接する反射面が多いので、地震探査法でこの反射面(「BSR」という)を探すことで鉱床を探す。とりあえず、日本の天然ガス14年分のメタンハイドレートが南海トラフにあるといわれるが、もっと深いところまで探ればもっと見つかる可能性大。 (1)微生物分解起源よりも(2)熱分解起源のメタンハイドレートの方が、深い地層で圧縮されている分、大量に取れる可能性がある。ちなみに、一般的な天然ガスもほとんどは熱分解起源。しかし、熱分解起源メタンハイドレートは見つけにくい。今後の課題。 なぜか、メタンガスの多いところはカニも多い。カニの漁場はメタンハイドレートを探すヒントになるかもしれない。 日本は、早くからメタンハイドレートの掘削研究に取り組んでいる。計画では、2012年からは商業生産のための技術整備が始まる。2018年の商業化が目標。韓国やインド、台湾も熱心に研究している。特にインドは有望な鉱床を見つけているため2014年からの商業生産を目標にしている。 過去の生物の大量絶滅は、メタンのせいではないか?メタンハイドレートとして固定されているメタンがなんらかの理由で大量放出されると、二酸化炭素濃度が上昇し、酸素が減少することで、生物に致命的ダメージを与える。メタンハイドレートは、温度や圧力の変化に敏感で、簡単に分解しやすいという特性がある。 海底のメタンは漏出してもほとんどは海水に溶ける。しかし、メタンハイドレートを取り出すと地質が崩れやすくなる。地すべりやそれにともなう津波の発生も考えられる。そこでメタンハイドレート鉱床に二酸化炭素を送り込み、二酸化炭素ハイドレートを代わりに挿入するという方法が考えられている。メタンハイドレートよりも二酸化炭素ハイドレートの方が生成条件がゆるい。地盤を安定させ、しかも、二酸化炭素を貯蔵できるので一石二鳥。 天然ガスの液化はコストがかかるので、天然ガスをハイドレート化して運ぶことも検討中。マイナス20℃で安定するので、液化よりは高温で運べる。また、タンカーは往路では空っぽなので二酸化炭素を積んでいく。そして、天然ガスの採掘地に二酸化炭素ハイドレートを貯蔵すればいい。 メタンハイドレートの資源化に成功しても、天然ガスを上回るほどの採取は期待できないのではないか。あくまでもエネルギー多様化の一つ。日本が資源大国になるとは思えない。 などなど。
海底資源のことが、良く解ります。一般向けとしては大変良くできている。
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