赤いダイヤよりも短く短時間で読むことができます。
明治時代の米相場で、合百というノミ屋さんがいましたが
(今で言うところの=CFDか?)が詳しく解説してあって面白い。
当限・中限・先限の全部の下1桁の数字を足して、
その数(0〜9)までを当てるなんて
こりゃ、バクチだわ。しかも当たる確率は十分の1なのに払い戻しは
8倍!
でも主人公はこれで必勝法を編み出し
胴元を潰し、銭を作ってガンガン相場に勝っていくのです。
後半の海外編は、モナコのカジノが舞台。昔も今も
すべてを巻き上げるために、スパイの凄腕の女がいるんですよ!
昔の相場が知りたい方はぜひ!
竹本淳一
戦後をしばらく過ぎた昭和における、値段の乱高下が
激しいため赤いダイヤと呼ばれるの小豆の先物取引を巡
る攻防がメインストーリーです。
木塚慶太(主人公)が商売に失敗して多額の借金を抱
え、海で入水自殺を図ろうとするも失敗し、相場師森玄
一郎(森玄)に助けられるという所から話は始まります。
主人公は梶山作品に共通の、見た目は良くなく学歴も
無いが、頭が切れ人として憎めないというタイプです。
主人公が如何に苦境から脱出するのかという部分も
もちろん面白いのですが、森玄の人物造形が素晴らしく
魅力的です。何せ自殺を図った主人公を助けて食事や
衣服を与えたものの、主人公に説教するでもなく、事情
を聞いてあげるでもなく別れてしまうのですから。
おそらく実在の人物をモデルにしていたりするので
しょうが、そんなことは知らなくても十分楽しめます。
作者が意識して当時の風俗等の描写を巧みに織り込ん
でいるせいで、生き生きとした昭和の一時代を味わえます。
優れた経済小説、読んでワクワクする小説であるに留
まらず、昭和の一時代を切り取った優れた時代小説でも
ある本書は、読む価値があります。
朝鮮半島は京城に生を受けた梶山ならではの佳品三篇。相手(朝鮮人)よりも優位又は高みに立つことにより生じていた主人公の日本人としての「同情」心が、様々な事件を経て「贖罪」心にまで昇華する様が見事に捉えられている。1950〜60年代に書かれたとは思えない瑞々しさと今日性を有する作品群である。(また、朝鮮の古俗や慣習に関する一種の情報小説としても読める。)一読をお勧めします。
今やノスタルジーの対象として語り倒されている「昭和30年代」だが、本書を読むと様々な意味で隔世の感を禁じえない。特にそう感じたのは死傷者280人を出した国鉄事故を扱った「かくて「鶴見事故」は起こる」。事故直後に発表されたにも関わらず、この記事、とにかく冷静なのだ。当時政府の規制によりがんじがらめにされていた国鉄の経営状況を冷静に分析し、無茶なダイアも政府と国民(中でも都市住民)がよってたかって国鉄に押し付けたんじゃないか、という加害者擁護の論陣を張っている。翻って昨今のメディアはといえば、「福知山線脱線事故」の際、事故原因の究明もどこへやら、JR西職員が「ボーリング大会」をしていたやら、「飲み会」を開いていたやら、事故周辺への執拗でヒステリックな攻撃に終始した。
この彼我の差の背景には、「敗戦」という未曾有の「大惨事」の記憶がまだ国民一人一人の間に強く刻まれていた当時と、人が死ななくなった現代との死生観の隔たりや、事件事故について被害者の視線でしか受け止めようとしない国民感情の変化があるのだろうが、それにしても別の国の出来事と見紛うほどの変化である。
すでに昭和が歴史になっていた、ということであれば、このところの「昭和ノスタルジー」ブームにも何かしら理由があるのかもしれない。
ビブリオマニアの本。 本好きや何か熱中するものがある人には頷ける所が多い。
ただし、最終章「水無月十三・・・」の章は、少しグロテスクでもあるので、できれば読まない方がいいだろう。 この章を読む読まないで、評価は変るだろうし、人によっては吐き気がするかもしれない。 読む場合には「そういった人種もいるのか」と納得するか、自己責任ということで。
とはいえ、この最終章こそが世にいるマニアという人種の感覚を余すことなく伝えうるものであると思う。
ちなみに、新判の帯の「ミステリーの傑作」という広告は、この本を知らない出版編集者の誤りだと思う。
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