音楽自体はそれほど深いものでもないので、軽く楽しむには好適。前橋氏の特徴がよく表われているのがメンデルスゾーンで、冒頭のあの退屈なメロディーが彼女の手にかかると非常な情感を持って響いてくる。
講義の録音をそのまま文章にした本。わかりやすい語り口で、演奏解釈について教えている。 これは、現在のスタンダードではないが一貫しているので説得力がある。音楽の文法を明らかにしようとする挑戦である。楽譜に書かれていることが全てで、それを詳しく細かくおざなりにしないで読み取っていこうとする姿勢である。 現在では、作曲家の生きていた時代の音を復元してそれを参考にするという考えがあるため、彼の姿勢は現代的ではない。だからこそ音楽を見るときの基準をもうひとつ持つことが出来るようになり、古い音楽と新しい音楽の差をよりよく理解することが出来るようになる。 問題といえばわかりやすく、多岐に渡った内容のために流してざっと読んでわかった気になってひどいときにはそれをそのまま他人に教えようとしたりして失敗する馬鹿が出る恐れがあること。
「のだめ」ファン待望のCD8枚組みです。
やはりと思っていましたが、古い音源ばかりです。
しかもアメリカのオーケストラばかり。
バーンスタイン/ニューヨーク・フィル、セル/クリーヴランド管など
それはそれは黄金時代の演奏です。
セルの演奏は、これでもかっというくらい縦が揃っているんです。
ワルター/コロンビア響なんてナチスから逃れアメリカに亡命したワルターのために作られたオーケストラです。
ピアノもグレングールドと超すばらしいんです。
しかし、しかしなんです。
やっぱりきれい音で聴きたい。聴いてみたんですが、音に幅がないんですよ。
壮大さがない。レコード時代はそれでよかったのでしょうが、CDの時代では
なんか安っぽく聴こえてしまいます。
また、千秋の演奏にあっていないと思うのは私だけでしょうか。
ブラームスの1番は、カラヤン/ベルリン・フィルのような重厚なイメージ。
ベートーヴェンの7番は、クライバーの駆け抜けるような演奏のイメージ。
かなり私情が入っていますが、、、。
でも、よくぞこんな企画のCDを作りました。
これを聴きながら、コミックをもう一度読むのはまた違ったイメージが湧くでしょうね。
個人的には、真澄ちゃんで登場したジョリヴェも聴きたかった。
前橋汀子さんの演奏が好きで、過去に2回ほどリサイタルを聴きに行きましたが、その時聴いた以上の名演が収められています。デビュー50周年を記念しての過去の名演奏から選りすぐりの録音を集めたわけで、前橋さんのファンは当然として、初めてヴァイオリンのアルバムを聴こうという人にはとてもよい名曲集だと思っています。
クリストフ・エッシェンバッハ指揮、チューリヒ・トーンハレ管弦楽団との共演のメンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64より 第1楽章:アレグロ・モルト・アパッショナート」、オッコ・カム指揮、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団との演奏のシベリウス「ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47より 第3楽章:アレグロ、マ・ノン・トロッポ」、ベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調『春』より 第1楽章」、バッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調より シャコンヌ」、サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」など、1982年から2008年にかけて収録された過去のアルバムで評判になった演奏の再録です。
いずれも前橋さんの音楽から醸し出される繊細な演奏のニュアンスを手に取るように感じられました。楽譜の読みも深く、物凄く丁寧に弾く演奏者ですから、ケレン味のない真っ当な王道の演奏といえましょう。
若い時から日本を代表するヴァイオリン奏者として世界を飛び回ってこられた方ですから、当然なのですが、技術的にもしっかりと丁寧に演奏されています。何より真摯な演奏スタイルです。技巧的なスタイルを前面に出すヴァイオリニストとは眞逆で、良い意味で古典的で正統派のヴァイオリニストです。情熱的な音楽に対しても、けっして崩れることがなく、作曲家の意図を考え、音楽と正面から向き合っているのが感じ取れました。
その他、ストラヴィンスキー「ペトルーシュカ」より“ロシアの踊り”のような情熱的な曲も乱れることなく弾き切っています。ピアノと和声を激しく弾きあう冒頭の演奏から引き込まれるでしょう。若い頃から旧ソビエトで学んだ音楽がここに結実しています。
ドビュッシー「亜麻色の髪の乙女」の少しくすんだように感じられる音色が淡い色彩を表現しているようでした。よく歌うヴァイオリンですし、適度な気品が感じられ優しさに満ちた音楽が展開されます。
ドヴォルザーク「ユモレスク」の弾む所とスラーのところの変化が一味違うでしょう。メロディーの美しさを際立たせるような高音の伸びが心地よかったです。 クライスラー「愛の喜び」は、ヴァイオリンの名曲集として多く取り上げられる作品ですが、華やかな冒頭の重音とテンポ・ルバートが音楽の幅を創り上げていました。
何十年とヴァイオリンに向き合ってきた前橋さんの音楽性の深さを感じさせるまさしくベストの演奏を収録したアルバムだったと思います。
人間の脳は、なぜ美しい芸術に反応するのだろうか? このCDを聴いていると、いつもそう感じます。背筋にピリピリ来るような衝撃、正確でありながら情感豊かな演奏、心に響き渡る音・・・。無伴奏ヴァイオリンのこの曲集は、前橋先生の神髄にふれられるような気がします。毎年、リサイタルでサントリーホールを満席にしてしまう(ホントは年に2回くらい聴きたいのだけど)前橋先生の珠玉の名品です。聴くたびに、涙がこみ上げてくるような感動を覚えます。
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