97年に発表されたシナリオライター荒井晴彦の監督処女作。その年の映芸やキネ旬のベストテンにも選出されている。一応原作はあるが、自身の体験が過分に表れた、失われた時代のある思いを引きずり続ける男女の“愛”の震動と疼きが感じられる傑作だ。
男とその恋人を奪った男、女とその恋人を奪った女。冒頭、その場に不在の親友に成り代わっての恋愛劇シュミレーションが始まり、まるで観念的な舞台劇の様相。どこまで自身でどこからが他者なのか、スリリングながら、実にまどろっこしいし、ややこしいのだけれど、ここまでしないと心情が吐露できないやるせなさと痛切さが身につまされる。
細かなカット割はせず、ローアングルに俯瞰ショット、ここぞと言う場面では長廻しが駆使され、抑制されているが印象的なショットが多い。
身も心も、に続くフレーズは、果てしない愛欲の渦流か、それとも、今も変わらぬ志しか。石川セリや高田渡が流れ、エンドロールには、まるであの時代の鎮魂歌の如く美しいギターの「インター」が響く。そして、奥田と永島の行きつけのBARにさりげなく貼られているゴダールの「ワン・プラス・ワン」と若松の「赤軍・PFLP/世界戦争宣言」のポスター。
R−18指定。柄本明と永島瑛子が素晴らしい。
荒井さん、もう映画は撮らないのですか?
女優達の体当たり演技は見物でした。名取裕子が売られた頃からのし上がっていくまでに顔が別人になってます。(若い役を違和感なく演じていたし、目付きが違う)かたせ梨乃はすごく世話焼き女房で困っている人を見るとほっておけない、後輩遊女を優しく見守るシーンはさすが姐御と言いたいくらい。そして忘れていけないのが西川峰子、ラストは恐ろしいくらいの狂った人間を演じてみえた、それくらい辛い目にあってきたんだと思い知らされるような気がした。でもラストはなんか中途半端で好きになれない。僕はどちらかと言うと観月ありさの『吉原炎上』が好きだな、濡れ場はないが遊女の悲しさや星野真里の炎の中のおいらん道中とかがすごく美しくみえました。
本書は『君よ憤怒の河を渉れ』『黄金の犬』『化石の荒野』で知られる作家・西村寿行氏が1976年に発表された冒険ミステリー小説である。 過去に映画化(1978・4・1公開、監督:中島貞夫、主演:菅原文太)と3度のドラマ化(1978/7/7〜1978/8/25・主演:あおい輝彦、1990/10/9・主演:三浦友和、2002/3/24・主演:かたせ梨乃)され、話題となった作品である。
誘拐された一人娘・良子を取り戻すために父親・秋津四郎が、愛犬・鉄を引き連れて犬にだけ聞こえる音を出すゴールトン・ホイッスル(犬笛)を持っていた良子の吹く笛の音を頼りに長野から北海道、山陰から日本海と日本縦断し、その背景にある巨大商社の陰謀により幾度も死地をくぐり、出会った人々に助けられながら追跡し続ける壮大な物語である。
攫われた一人娘を取り戻すために執念の追跡を続ける父親・秋津四郎、ゴールトン・ホイッスル(犬笛)を頼りに救出を信じる一人娘・良子、警察関係者のなかで唯一の秋津の理解者である警視庁公安部外事課・小西友永、犯人グループの一味でありながら良子を気遣う精神科医・法眼規子、今回の事件の中心人物である実行犯・三枝寛二、義憤に駆られて領海侵犯を侵してでも犯人追跡に協力する大型巡視船の老船長・村田武男、などなど…。
途中、秋津四郎が犯人グループの陰謀により全国指名手配を受けながらも警察の捜査網の目を潜り抜けながらも犯人グループの後を追う執念は大変スリリングであり、また、死別したと思われた愛犬・鉄との再会シーンや大団円も大変よかった。
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