黒を基調としたバックに鮮やかに浮かび上がる花や動物たち。体をくねらせて踊る子供たちの不思議な動き。ユッスー・ンドゥールの音楽に乗って展開される神話的な物語。どれをとっても日本のアニメとは一味違います。夜の暗さ、魔力への恐れなど、神秘的な「闇」を感じさせられます。 三歳から十三歳の子供と一緒に見ましたが、怖がりつつもひきつけられ、まさに「魅入られる」といった感じで見ていました。小さい子はキリクたちのコミカルな動きに大喜び。大きい子になると異界の魅力を感じたようです。もちろん大人が見ても、面白いです。 スタジオジブリということでトトロやラピュタのようなものを期待すると、ちょっと怖いかもしれません。アフリカンやアジアンの世界が好きな人には絶対にお勧めです。 キリクと魔女【日本語吹替版】 [VHS] 関連情報
一曲だけとは少しがっかりしたけど、この一曲がとてもいいので許すかな キリクと魔女 関連情報
実は映画を観てから原作に当たった。高畠氏の講演会の後、評判のいい外国作品をアニメ化したという安易な認識を突き崩されたからだ。主人公と魔女との対決という構図そのものよりも、キリクが孤独であることの方がより問題だった。今まで意識しなかった、童話の世界でははっきり表明されなかったせりふがあまりにも印象的だった。「黄金(きん)がなくても生きていけるけれど、水がなければ生きていけない」「いつでもいるんだ、わたしたちに苦しみを与えたがる人々が。その人たちをこちらは苦しめたりしないのに。そのことは分かっていなくちゃいけない、水はぬらすもの、とか、火は燃やすもの、とか同じように」「そうか。必要なのは、前もって覚悟しとくってことなんだね」「ときどきぼく、少しだけど疲れてしまうんだ、戦うのはいつもひとりだから…、少しだけど、自分が小さいって感じるんだ、少しだけど怖いなって思うんだ…」 母親・祖父・魔女、また村人たちとの会話の中で、キリクが「まっぱだかな無心さ(イノセンス)」「いつも目を覚ましている知性(あたま)」「自由な知性」を、いかに使っているか。一寸法師を連想させるような予定調和のラストシーンではあるが、村の男たちの歌が個人と全体の共通の問題を提示していて、なるほどと感じさせる。また、傷ついた心の持ち主である魔女の在り方が、ジェンダーを意識させて興味深い。 <原作本> キリクと魔女 関連情報
色彩がとても美しいですね。これだけでも見る価値がありました。ストーリーには寓意的な部分もありますが、押しつけがなく説教じみてもいないのが見事だと思います。何よりも動物たちが擬人化されておらず、自然で、しかも愛らしい。後半の冒険の部分は、笑いながら、はらはらしながら素直に楽しめました。 キリクと魔女 [DVD] 関連情報
キリクは大人も楽しめる、また、考えさせられる素敵なお話です。子供の物語で魔女が出てくる、というとほとんどが勧善懲悪ですが、このお話はそうではなく、「悪はなぜ起こるのか」ということがテーマの一つになっています。最後は驚く展開で、深く考えさせられました。小さなキリクが、母や大切な人に暖かく包まれる体験をしつつ、いろんなことに果敢に挑戦していく姿も成長がすばらしく描かれていると思います。子供たちも、キリクに自分を投影しながら、楽しんでくれることと思います。そうそう、デザインも洗練されていて、とても美しい。映画と合わせ、ぜひお薦めしたいです。 <絵本> キリクと魔女 関連情報