当DVD-BOXが発売されるまでの間、たくさんの人達の応援、そして努力があったことをまず特記したいと思います。私も応援していた者の一人ですが、それら全ての皆さんに深い感謝を。佐藤順一監督の作品が持つ「情感」が、現状最もはっきりと出ている作品が当作品だと思います。そして、ちょっとおしゃまさんな主人公・魔法使いのぽぷりちゃんを演じる小西寛子さんのお芝居がまた素晴らしい。シナリオが大変に素晴らしく、今の時代が忘れてしまっているものが、この作品は満ち溢れています。ネガティブなもの、モラルに欠けるものが子供向け作品にも増えた昨今、遠い未来までも伝えたいと真に思える数少ないアニメだと思います。話によっては大人でも泣けます。本当のアニメ好きの方、物語を愛㡊??れる方、そして小さい子供をお持ちのご夫婦、ないしは子供を育てたいとお思いの方へお勧めします。とびきり優れた「動く絵本」です。ぜひお子さんと一緒に観てほしいです。1話あたりの区切りも短く、それでいて42話もありますから、決して高い買い物ではないと思いますよ。 ふしぎ魔法 ファンファンファーマシィー DVD-BOX 関連情報
ずばり(作者の住む)岩手県の震災そのものがテーマです。夫のDVから逃げるためにたまたま来ていた女性、両親をなくして見も知らない伯父にあずけられることになった少女、そして老人ホームに入居する予定だったおばあさん、この三人が震災に遭遇し、偶然のように家族として暮らしはじめます。 岬の家を借りて、生活が始まります。ひとつひとつゼロから積み上げ、見直してゆく、自然とともにある生活の意味。 狐崎というこの町のひとびとも、大災厄で一切をリセットすることになり、新たな心のふれ合いが生まれるとともに、自分だけ助かった罪悪感、後悔、絶望。さまざまな思いが、どっとあふれ出ます。 後半はこの「ポスト震災」のひとびとの心の建て直しとなり、作者本来のファンタジー要素が息づきはじめます。 魅力のひとつは、柏葉作品によく登場する、知恵あふれるおばあさんの存在です。元型的には「老賢女」と呼びたいような。 この物語のおばあさんは、あの「遠野」出身で、実は小さいころから河童や座敷童のような生き物たちが見え、心が通じ合い、助け合ってきました。 偶然の母娘となったふたりは、このおばあさんの力で、新たな故郷を得て、癒やされていきます。そこが「岬の家」。マヨイガとはこの地方の伝説の、ふしぎな家で、家自体が心をもっていて歓待してくれるのです。三人が本物のマヨイガに招待され、ご馳走されて帰ってくるエピソードはしんと美しく心に残ります。 もうひとつは、震災の津波のために蓋が開いてしまったひとつの竈に封じられていた悪しきウミヘビの霊が逃れ出て、人々の心の闇や怖さを喰らってどんどん大きくなり、この地をとりもどそうとする戦いです。これは寓話ではなく、リアルに怖いです。大きなカタストロフとともに人々がふだん隠していた心の底の蓋も開いてしまう・・・ でもそれを、各地のお地蔵さまや河童、狛犬、おしらさまや、さまざまな存在がひそかにやってきて、三人に力を貸して、退けてくれます。 長い歴史の中で、風土がはぐくんできた神や精霊たちが、こうした時こそ、ひとびとに寄り添って力をくれること。 その力をしみじみと味わわせてもらいました。 故郷とは、ひとびとどうしだけではなく、その風土の精霊と心を通わせて、ともに在ることのできる場所。 盛岡在住の著者ならではの強い癒やしの物語です。 岬のマヨイガ (文学の扉) 関連情報
子供の頃、図書館で借りて何十回も読んでいました。もう20代になりましたが、たまたま思い出してまた読みたくなり購入しました。あたたかい不思議なお話が四話収録されており、大人になった今でも楽しく読めました。わたしは第二話の「魔女のパック」が特に好きです。余談ですが、大人になってから読むと、色々と現実を知った大人なのにこんなに素敵なファンタジーを思いつくなんてファンタジー作家はすごいなぁと感じました。ちなみに解説は松田青子さんです。松田さんの『スタッキング可能』もオススメです。(児童書ではないですが) 大おばさんの不思議なレシピ (偕成社文庫) 関連情報