若いときは寅さんに関心はなかった.齢50となり,最近は土曜日にBSで「男はつらいよ」シリーズをみている.寅さんのことばがしみじみとわかるようになってきた. 男はつらいよ 寅次郎音楽旅~寅さんのことば~ 関連情報
小津安二郎作品への主演で有名な筆者の口述伝記。寺に生まれ、継ぐことを嫌って放蕩し、偶然に潜り込んだ俳優の世界。長い不遇の時代をしぶとく生きて、いつのまにか松竹の看板俳優に。小津のみならず、清水宏、稲垣浩、木下恵介、山田洋次といった大監督達の名作快作にも顔を出す。 大監督や俳優達のエピソードはどれも興味深いが、やはり小津監督との交流が興味深い。蓼科での合宿や九州旅行、白樺派との交際。映画の黄金期の余裕が感じられる、古き良き日本映画界の一ページが丁寧に語られる。その語り口は、映画の中での役柄そのままの、実直な人柄が感じられる。 俳優になろうか―「私の履歴書」 (朝日文庫) 関連情報
山田太一原作 笠智衆主演 『今朝の秋』【NHKスクエア限定商品】
80代の父が、余命の無い息子に「いずれは皆死ぬんだ、遅いか早いかのちがい。特別の事では無い」の台詞が、初めて見た時に強烈に胸に刺さりました。今回見直して、自分が年を取った分余計に身に染みた作品でした。出演されていた俳優の大方の方が亡くなられ、改めて素晴らしい役者の間合いを堪能させられました。それにしても笠智衆という役者は何なのだろう!!48歳であの「東京物語」の父を演じたその雰囲気のまま、実年齢の80歳の日常を淡々と演じている(呼吸をしている)。笠さんの所作のすべてが、日本のかつてあった男(大人の男)のすべてを表出しています。昨今の何かと若い者ぶる風潮の中、父と息子がきちんと会話のできる成熟した大人はいったいどこに行ってしまったのだろうか。お互いにヒステリーになりながら、誰にでもくる死をどんな顔で迎えるのでしょうか。折にふれて味わい直したい山田太一の作品中、私の大好きなベスト作品です。 山田太一原作 笠智衆主演 『今朝の秋』【NHKスクエア限定商品】 関連情報
実在の高名な数学者をモデルにしたと言われる主人公を演ずる笠知衆の「浮世離れ」し「ひょうひょう」とした好人物に、先ず惹かれる。今日では幾ら「変人の学者」でも此処までの「御人好し」は居まい。笠知衆の最も得意とする人物像だ。良き時代の奈良の情景が懐かしいし、登場人物に悪人が居ない(泥棒も含め)のも当時の日本映画の定番。他の配役も、若き日の岩下志麻や貫禄充分の淡島千影等魅力的だ。只、改心する泥棒役の三木のり平は、やや見劣りする。周りの千両役者達に飲み込まれてしまったのだろうか。文化勲章強盗シーンがハイライトなのにもう少し笑わせて貰いたかった。 好人好日 [VHS] 関連情報
この映画でのテーマは結婚ではないだろうか?若い娘がいつまでも結婚しないことを心配し、家族や親戚が縁談を持ちかけてくるのに、本人が選んだ人物は昔から付き合いのある家の一人息子だ、という点が面白い。あまりに近くにいて今まで気づかなかった、というセリフが印象的。人生の多くの場面では、身近にあるものこそあまり気づかないことが多いのかもしれない。選んだ相手はいわゆるバツイチで、娘の家族らがそのことを心配している点に、時代錯誤を感じた。いまの時代ではそんなことはあまり気にならないのだが。一番大切な人と一緒になることが一番良いのだと改めて気づかせてくれる。小津監督らしい温かいタッチで描かれていて、とても面白かった。 麦秋 [VHS] 関連情報