前作の大ヒットを受けて、ティム・バートンが制約から解放されたことによって誕生した映画。
とにかく、もう、バートン節がこれでもかというほど炸裂しまくっている。
しかも、表現は回りくどくなく、突き刺さるくらい直接的で分かりやすい。
社会から隔絶された三人の怪人たち。
仮面で素顔を隠し、バットマンになることでしか自分を表現できないブルース・ウェイン。
本当の自分をうまく表現できずに、社会に媚び諂って生きていくことに疲れ果てたセリーナ・カイル。
誕生した瞬間から両親に拒絶され、人間社会に対してただひたすらに復讐心を燃やし続けるペンギン。
まさに、「哀れ」としか言いようがない物語。
こういった社会に順応できない者たちが結局は社会によって都合よく踊らされて捨てられて終わり、といった初期のティム・バートンによく見られる自虐を含んだような作風だが、
それが逆にバットマンだから納得できる。
「一体、なんて恰好をしているんだウェイン!」
現実とは、常に無情である。
BDならではのハイ・クオリティへの追及には今ひとつ消極的なのは残念だが、WBのBD廉価化の流れは悪くない。BDにて映画を所有したいと考える層は、自分を含め、既に別の商品カテゴリーで同一の映画ソフトを所有している者が大半だと思うが、この価格帯だとまたしても購買意欲がそそられる(笑)。
バットマンと言えば、今やクリストファー・ノーランの手によるダークでハードなクライム・アクション、とのイメージが確立された感がある。新たなバットマンへの称賛は惜しまないし、今から次作にも期待大なのだが、忘れてはならないのは、ティム・バートンによるシリーズ第2弾。善悪が曖昧で複雑でねじれたキャラクターたちが跋扈し、ボー・ウエルチが手掛けたプロダクション・デザインの数々とダニー・エルフマンのメイン・テーマ。そのゾッとする様な不気味さと美しさに彩られたナイトメアとファンタジーの奇跡の融合。作品的には限りなく★ボシを捧げたい大傑作で、果たして、今まで何回観た事だろう。
で、肝腎のBDソフトとしてのクオリティだが、正直思った以上に好印象を持った。今作の特徴である全編を支配する暗欝でダークな色調こそ今ひとつシャープさを欠けるが、一転バートンらしい濃厚な総天然色のドギツサはくっきり映し出される。主要キャラクターたちのみならず、背景にうごめく人物たちの表情もきめ細かく確認出来る。キャットウーマン・
スーツのラテックスの光沢感も鮮やかだ。この屈折した悲しみの寓話が新たに甦ってくる。
このクオリティなら、既に所有済みの「ダークナイト」以外の、バットマン映画もBDに買い替えても良い。
それまでのアメコミの映画化とは、映画としての完成度の点で一線を画した『バットマン』シリーズ。サントラも映画同様魅力的。レトロなSFを異化したかのようなダニー・エルフマンの音楽は、映像抜きに聴いても美しい。ゴッサムの、冷ややかながら美しく、薄汚れていながら格調高い町並みが目に浮かぶようだ。新録音のため、映画を何度も観た人には違和感があるかもしれないが、音楽だけを聴くならこういったクリアな録音の方が適しているかもしれない。その辺りは好みだろう。
前作の人気を引き継いで、ティム・バートンとダニー・エルフマンがタッグを組んだ作品。前作の有名なテーマがよりダークにアレンジされて、バットマンに戦いを挑む、キャットウーマンやペンギンのテーマ曲も作曲されました。今回もフルオーケストラと混声合唱を取り込んだ魅力的なアルバムに仕上がっています。11分にも及ぶ「最終決戦」は見事としか言い様がありません。