ここまで真正面から岡林信康というミュージシャンを取り上げた本は、恐らく初めてではないだろうか。
日本のフォーク/ロック史において必ず名前の挙がる重要人物でありながら、バイオグラフィ的な本はおろか、音楽雑誌などでの特集もほとんど見た記憶がない(本人によるエッセイ集などはあるが……)。それだけに、本書は掛け値なしの“待望”の一冊といえる。
伊藤銀次との対談では名盤「金色のライオン」や「狂い咲きコンサート」について、坪内祐三との対談ではこれまでほとんど言及されることのなかった'80年前後の岡林作品について、次々に興味深い話が飛び出す。そして美空ひばりとの貴重すぎる対談(75年)では、歌に対する二人の想いが、時に笑いを交えながら語られる。
そのほか長年岡林さんをサポートしてきた平野融、
ジャズピアニストの山下洋輔のインタビューや、全36作品のディスクガイド(愛情いっぱいの文章だなーと思ったら、一連の復刻作を手がけたディスクユニオンの方でした)など、見どころ満載!発売日に買って以来、繰り返し熟読しています!
非常に若い頃のエンケン!渡さん!哲夫さん!揃って写っている映像は少ないと思われる五つの赤い風船に六文銭、岡林の"ロック化"で伝説となったはっぴいえんどのバッキングプレイ!
手軽なビデオカメラがなかったゆえに素材自体が少ないはずの貴重なライブ映像がまとめて楽しめることに、当時を知る人はもちろん「伝説」として伝え聞くだけだった世代にとっても待望のDVD。
フォークシンガーたちや当時の観客(参加者)たちの服装、彼らの「話し方」、身ごなしにも、ドラマや劇映画では知ることのできない昭和40年代の生活感、空気感があらわれており、味わい深い。
それゆえ、鑑賞後には「もう終り?」と思う、収録時間の物足りなさが惜しい。
特典映像はどうにも「つけ足し」の感が否めない。もう少しでも、世に出ていない素材はないのだろうか!