~欧米で高い評価を得たのは、こういうご時世だからと割り引いても、面白い、興味深い本です。海に囲まれ、他国と自国が厳然と分かれている日本に住む私たちには理解できないであろう「国境」「侵略」「戦争」という現実。そこに生きる人たちを、へこたれぬ生命力の持ち主として軽妙かつ深淵重大に描いています。版画のようなシンプルなイラストは、この国の現~~実を誇張することもしないかわりに、決して差し引いても見ないという確固とした視点と気高さをも匂わせる精神性さえ感じさせます。女性にはもちろん、カップルで読んで読後の感想を話し合うのも良いかも。とにかくおすすめです。~
フランス製作のイラン映画『ペルセポリス』のサントラ。
オリエンタル風味を排除して、普通に情感豊かな劇伴になっているので
「イランぽさ」を期待していると面白みに欠けるかもしれませんが、
普遍的な音楽を目指した──これは監督の要望なんだそうです。
本編では意図的に「音痴」=「パワフル」に唄われていた『アイ・オブ・ザ・タイガー』(20曲目)ですが、
このサントラで聴くと、普通にフレンチポップで、すごく耳に馴染みます。
しっとりしていて、いい感じです。
オススメです!!!
精緻な日本アニメ映画(幼児向けを除く)との表現形式の違いに驚く。少ない数の単純な線でのっぺりと平面的に人物や建物が描かれ、しかもほとんど白黒。画が動かずカメラが動くように見えるシーンが多い。でも説得力がある。
王政打倒の興奮も束の間、宗教の締めつけが強まり、反対者は弾圧される。そしてイラクとの戦争。自由を求め続けた開明的な一族に生まれた少女がウィーンに送りだされ、そこでアイデンティティーの危機、失恋、孤独等を経験し、イランに帰国。うつ病を克服するために
美術を学ぶ等種々の経験を経て、再出国する。公明正大になれ、との祖母の言葉と、ここはあなたの生きる国ではない、という母の言葉に送られて。
イラン現代史を背景としつつ、異なる文化で成長する人間の内面の物語として普遍的で胸を打つ。祖国の抑圧体制と決別せざるをえない人は今も世界に多くいる。
しかし、そのような意識を持つのは裕福なインテリ階層。本作ではどうして父が当局に捕まらないのか、そもそも何を糧にしているのかが不明。女性三代の意思のリレーが明確なだけに、その点の説明不足が惜しい。