世界観ではなく世界感。
知っているようで知らなかった世界を体感できる一冊。
パラパラと本を開いた瞬間、まるで大通りから一本わき道から裏通りに入って、ピンク色の電飾通りに迷い込んでしまったような感覚にとらわれる。
常識が常識でなくなる感覚。むしろこれが真実か。
しかし、どこか懐かしい。
はっきり言って知らなくても生きていける。
知らなくても金輪際困ることはない。
自分から進んで行くことはないかもしれない。
ただし、一度踏み込んで味を知ってしまったらまた足を運んでみたくなるそんな感覚。
身を委ねてみると意外と心地良いことに気付く。
現実を知る。と、視野が広がる。そして、一つの筋道が見えてくる。
失敗や試行錯誤は成功の母であるというが、
大衆からはおバカと蔑まれようが、なりふり構わぬむき出しの創作姿勢と商業主義に対する人間臭い苦悩も見えてくる。今や巨匠と言われる監督も通った道であったろうと想像しながら読むと感慨深い。
それがB級映画の世界か。
私は以前、「デスファイル」(=「デスノート」+「Xファイル」)というのを見たことがあったが、本書に取り上げられているのは、ほんのごく一部のB級映画であることが分かる。
著者はこの裏通りの世界の案内人であり、裏通りを知り尽くし人生の栄衰を共にしてきたような(まだ若いのに)老練なバックボーンを想起させる。
本書の圧巻は、
「マイケル・ジャクソンINネバーエンディングストーリー」でも
(「呪怨」+「輪廻」=)「怨廻」でも
コンパ芸人カラテカ入江もビックリの「全日本(一気)コール選手権」でもなく、
バカバカしすぎて初見で敬遠・放置しがちな事柄を掘り起こして、独特の語り口で付加価値を与えているところだろう。なんでも鑑定して一見ガラクタにマニア価格を査定したり、まるでボケてもツッコんでもらえない人を見事に救済しているようで微笑ましい。
読み終えると、装丁のイラストを見ても笑える(哀愁の表情、S→Zだったり、自転車のかごの中身はピカ○○ウか、右上の
アリコンは友近に見える)
本書は見開きで1作品の解説、文脈の抑揚感、写真も豊富で
コンパクトに読みやすい仕上がりになっている。
敢えて言えば、単行本ではなく雑誌の大きさで安価に定期的に売り出して欲しい作品か。
(電車とか持ち運ぶにはこのサイズが良いかもしれない。)
本も映画も作品の
タイトルだけで内容を想像して、見ないのはもったいないと気付かせてくれる一冊。