この映画は
ドイツ語の台詞がひとつのカギとなっています。
ドイツ軍は皆、ユダヤ人をdu(貴様、キミ)呼ばわりしています。Duはよほど親しい友人か、見下した相手に対してしか使わない二人称です。横一列に並ばせたユダヤ人たちの中から
ドイツ兵が恣意的に何人かを一歩前に出させた末に射殺する場面がありますが、この時も
ドイツ兵の台詞は「Du!=お前(前に出ろ)」という一言です。
しかし、隠れていたシュピルマン(
ドイツ語ならシュピールマンSchpielman=演奏者、を連想させます)を見つけたナチのホーゼンフェルト大尉は彼をduではなくSie(あなた)で呼びかけます。Sieというのは初対面の人に呼びかける丁寧な二人称で、
ドイツ人は親交を深めるうちに、「これからはSieではなくduで呼び合わないか?」と尋ね合った末にようやくduを使うというのが一般的です。
ですからこそ、Sieで呼びかけられてシュピルマンは目の前の将校が他のナチとは違って自分を人間として遇してくれていることに一瞬にして気づくのです。大尉の「ピアノを弾いてくれますか」という比較的丁重な依頼を受けて、おそらく自分は曲を弾き終わったところで殺されることはないだろうというかすかな確信をもってシュピルマンはピアノに向かったはずです。
英語には
ドイツ語のようにduとSieという二種類の二人称がなく、すべてyouで表現するため、英訳台本をもとに日本語字幕を作ると
ドイツ語の台詞が正しく翻訳されません。劇場公開時の字幕では大尉があたかもduで呼びかけているような乱暴な日本語になっていました。DVDとビデオではぜひ改善してほしいものです。さもなければ、シュピルマンを助けた大尉の人物像が正しく伝わらないことになるでしょう。
2年前?に映画を観た帰りに買いました。
映画の曲はすべて
ショパンの曲なので、楽譜もそのまま載っています。
もちろん難しいですが、始めのメインの曲は頑張れば弾けるし、中に何曲か弾けるのがあります。
ピアニストでも弾ける人は少なさそうな曲は、CDを聴きながら楽譜を眺めるとかでも楽しいと思います^^
変に簡単にアレンジしてあったりしないのが、私は気に入っています。
観終わって何が一番怖かったって、これが実話だと言うことでした。単なる映画用の脚本ではないのです。私はシュピルマン氏の回想録も読みましたが、ほぼ忠実に再現されていました。大きく違っていたのは、主人公が収容所行きの
列車に乗るのを免れた時、原作では「走って逃げた」とあるのを本作品では「歩いて逃げた」のです。これは同じくゲットーでの生活を経験したポランスキー監督の体験(逃げるときに「走るな」と言われた)から変更したものです。そしてもう一点は、
ドイツ人将校に見つかって弾く曲が、映画の中ではより感動的な曲になっています。シュピルマン自身が有名なピアニストであったからこそ
列車から一人降ろされ、かくまってくれる同志がいて、
ドイツ将校にも助けられたのです。作り話な!らばあまりにも都合のいい作品だと評されても当然ですが、この数奇な運命を生き延びた実在のピアニストの回想録であり、また監督自身のすさまじい実体験を真正面からとらえた作品です。
もう映画はご覧になりましたか?この本は映画を見る前の方も見終わった方もどちらにもお勧めしたいです。戦場のピアニストの本は、原作を含め色々ありますが、これは小説と違い戯曲形式で書かれています。1/3はカラーの映画の写真やプレス用の資料が含まれていて、軽い映画パンフレットのような感じです。戯曲も勿論映画に忠実で、映画を見られた方は、読んでいるとあの映像や空気感、役者たちの演技などががじわじわと蘇ってきます!これから見ようか迷っていらっしゃる方も、これを読むととても映像が見たくなるでしょう。「戦場のピアニストを活字で追ってみたいけど本をゆっくり読んでる時間はないよ」という方におすすめです。あっという間に読み終えました。もう一度映画を見たくなります。「読!んでおくべき映画」だと感じます。