この小説は、1990年代に自民党が下野し、新生党などによる連立政権が誕生した時に起こった、通産省の内紛に関するものです。
通産省の斉藤局長が、連立政権に批判的な言動を示したことから、連立政権下で就任した通産大臣が斉藤局長を排除しようとし、その動きに、省内の反斉藤派が乗り、省内の派閥抗争が勃発し、斉藤局長は罷免されてしまうという内容です。
　
反斉藤派が怪文書などを流して、斉藤局長の追い落としにかかる訳ですが、怪文書を流したのは誰か、怪文書の本当の意図は何かということが結局分からないままのため、派閥抗争を、基本的には斉藤局長側の視点から見るという構図になります。
　
その当たりが影響して、少々、陰謀術数渦巻く派閥抗争といったドラマチックな展開欠けてしまい、物足りなさを感じます。
　
同じ通産省物の小説としては、城山三郎氏の「官僚たちの夏」の方が、ダイナミックで格段面白さが違います。
事実重視で書かれたもののため、小説的な面白さは半減していますが、実際、こういったことがあったんだと知る上では、一読の価値はあるかもしれません。