真心の四枚目。個人的には、この頃までの彼らがいちばん信用できた。ファーストから本作までを真心の第一期としてよいと思うが、厭世感・虚無感をただよわせ、頭のよい人間だからこその内省と混沌を歌にあらわす。うそくさい恋愛や友情、そういう額面どおりのものに毒舌鋒をぶつけている彼らの歌はじつに新鮮だった。のちのハイパーアクティヴになっていった倉持陽一よりも、この時期の倉持こそ信用できたのだ。本作収録の「秋風」は、倉持の描く厭世的な気分がみごとな風景描写とともに迫ってきて、こんな歌を書けるとはとんでもない詞才だと驚いた。曲調はフォークロックで、詞の空気にもマッチ。こういうところから倉持が脱け出したからこそ武道館ライヴまで実現したのだろうけどなあ。そして、当時の倉持はさんざん毒気を吐く一方で「あの子が怖い夢を見ないように」とラヴソングを歌った。こういう恋歌こそ信頼に値したのだった。