当たり前だが、五七五の“短歌”集ではない、短“歌詩”集。最初、読み間違えていました(笑)。
矢野さんの詩(歌詞)それぞれから一部が抜粋され、テーマ(?)ごとにまとめて並べられている。 個人的には、この“テーマ”が興味深い。なぜ、この曲とこの曲とが1つのジャンルなのだろう、などと考えてしまう。
他に「お話」(創作短(掌)篇)、ライヴチラシからの抜粋(?)、ディスコグラフィ、年表を収録。
−−−−−−−− でも、ありきたり(同種の試みは既にたくさんある)だけど「全歌詞集」的なもののほうが、良かったんじゃないのかなあ。 抜粋版というのは、作り手(エディター)のぎりぎりのセンスが、より問われるわけで。 この本は、そういう意味では、ちょっとどうなんでしょうか…。
とにかく、ピアノの音色のバリエーションを楽しんでほしい。 突き放すようで 纏わりつくような 距離感の定まらない音が心地よい。 その音に乗って聴こえてくる詩は 溜め込んだ感情で出来た言葉が 表面張力のグラスから一気に零れ落ちるかのような勢い。
無骨で優しく 柔らかく研ぎ澄まされ 時に問いかけるような彼女のメッセージ 頭に少し余白を作って お耳を傾けてみてください。
こちらが呑み込まれてしまいそうな存在感。 影すら計算された世界。 編成も編曲も、そして歌詞さえも変えてしまうライブ。 矢野絢子の歌たちは、きっと常に、進化し続けている。 途中でふとした瞬間に見せた笑顔は、 体の内側から感情が溢れ出したような、 そんな自然な笑顔でした。 観終わったときあなたは、 「参りました。」 と、応えているはずです。
この作品は、「いいね。」なんて軽く言える作品ではなく、 ものすごいパワーを持ったアルバムだと思う。 皆さんのレビューが長くなる気持ちがよくわかります。
まず驚くのが声の迫力。 生きることの重みを感じずにはいられない。 故に、正直聞きたくない、 矢野絢子の音楽と向き合えない、と思う時期があった。 それだけパワーを持っている歌い手という事だ。
ときには、人生を達観したかのような位置からつばを吐きかけられ、 ときには、強くなろう!とおしりをバシッと叩かれる。
そして、力強いうえに繊細な歌詞の素晴らしさ。 さらにはメロディーセンス。
一見まとまりのないように見えるアルバムだが、 通して聞くと、これだけ個性も重みもある曲を抵抗なくすんなり聞けてしまう。 これはすごいことだと思う。
冷たい風を受けながら、暗い夜の帰り道に このアルバムを聞きながら、何もない部屋に帰る。
すると、普段見過ごしている大切なものを思い出させてくれる。 ぜひ、矢野絢子を体感してほしい。
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