サッカーをサイドバックから語った本。著者はサッカー男子日本代表が初めてワールドカップ出場を果たした1998年
フランス大会の全3試合で先発出場している。かつての
ブラジル代表の「黄金のカルテット」のうち
ソクラテスを除く3人に直接指導を受けたり、レオナルドやジョルジーニョといった一流の
ブラジル人選手とプレーした経験もあり、解説者として見てきた近年の試合の話しを交えながら、近年攻撃においても増々重要性が高まっているこのポジションについて、今までの主流的なサッカー戦術の変遷とSBの関係、求められる資質、自身の経験も交えた日本のサッカーにおけるSBの役割の移り変わり、過去および現在の内外の優れたSBの選手たちの特徴といった流れから語っている。
フルバックと呼ばれていた頃からトータルフットボールの時代へ。そして1982年の
スペインW杯で顕著になった攻撃型サイドバックの台頭。ウイングバックが流行した1990年の
イタリアW杯。1990年代半ば以降は中盤が
コンパクトになってスペースが無くなった分、サイドでゲームを作る重要性が増し、サイドバックには守備と攻撃参加に加えて攻撃の起点になって味方を使ったりゲームメークする能力も求められるようになってくる。ただし、もっとも重要なのは守備であることには変わりがないということも強調している。
このポジションに優れた人材が多い現在の日本代表においてもサイドバックが得点に絡むケースは多く、「中盤とのコンビネーションによる崩し」「スピードと豊富な運動量」「相手を抜ききらない状況で上げたピンポイントのクロス」「1対1での仕掛け」という4つのポイントを挙げながらいくつかの得点シーンを振り返り、他選手とのコンビネーションとオフ・ザ・ボールの動きが得点になるかどうかの分かれ目だと述べている。
「第4章 名良橋が選ぶ世界のサイドバックTOP10」では、カフーやロベルト・カルロスと並んで、内田選手と長友選手を取り上げている。また、「第5章
ブラジルを目指す若きサイドバックたち」では、酒井宏樹、酒井高徳、古林将太、奥井諒、清水航平選手の名を挙げ、酒井宏樹選手とは対談も行っている。特別付録のジョルジョーニョ氏へのインタビューでは、「今でもまぶしすぎて顔を正視できない」といいながらも、しっかり「現役時代の名良橋晃の評価をお願いします」という質問をしている。尚、鹿島アントラーズで名良橋選手の背番号を引き継いだことのある内田選手が、帯に推薦の言葉を寄せている。
「
ブラジル代表に対しては明らかに個の力の差があるのだから、ああいう相手の場合には、それに合った戦い方をしていかなくてはならない。今の日本代表は、対戦相手の力に関係なく、ただ自分たちのやりたいことをやる感じになってしまっている印象を受ける。いちばん重要なのはバランスであり、己の力を知り、同時に信じること」(ジョルジーニョ)。
この本の内容は今回の
ブラジルでのコンフェデ杯の前に収録されたものだが、個人的には、上記に引用したジョルジョーニョ氏の指摘が印象に残った。コンフェデ杯の3連敗をきっかけに日本代表が今後ワールドカップに向けて個の力で勝る相手にもバランスよく戦えるようになることを期待したい。あと、どんどん外れるが、本書でも絶賛されている長友選手のケガの具合が心配である。
フランスワールドカップアジア予選を振り返るDVDです。一喜一憂した当時の記憶が鮮明に蘇りました。カズ、井原などの姿や若い中田などサッカーファンにはたまらない内容です。