オアシスの名作モーニンググローリーをトップから蹴落としてデビュー作にしていきなりチャート1位を獲得した超話題作だったのですが・・・今となっては誰も覚えてないし、中古屋で激安でたたき売られている作品となっています・・・。何なんでしょうね、これだけの実績があるのに歴史に残ってなさの凄さは。ブリットポップという括りでもあまり名前があがってこないが、作品的には冒頭から地味ながらグイグイと引き込んでいく職人肌のいかにも英国人受けしそうな渋いブリっトポップサウンド。日本人受けはあまりしない典型タイプだが、丁寧に作り込んである作品と言えよう。ただ、全体としてはやはり地味であり、モーニンググローリーを蹴落とした・・という先入観がマイナスに働く可能性も高い。どんな凄い作品なんだ・・・・やはりモーニンググローリーには遠く及びません。まあバンドとしてはオアシスフォロワーというよりシャーラタンズやオーシャンカラーシーンフォロワーと言える。
大方の予想に反して17年の長きに及んだブルートーンズのキャリアにおいて、2006年発表のセルフ
タイトルアルバム『The Bluetones』は、結果的に彼らの最高傑作となりました。
このアルバムでは、1stと2ndアルバムを手掛けたヒュー・ジョーンズと再び組んだことで、1stアルバム『Expecting to Fly』以来となる、あの「蒼さ」を取り戻しているだけでなく、なおかつデビュー以来から10年を経過したことで、これまでにない深みのある音楽性へと成熟をみせており、いうなれば「フレッシュさと懐の深さを両立した」、素晴らしいギターポップ作品に仕上がっています。これは、
メジャーレーベルから離れてリリースした前作『Luxembourg』が商業的に失敗に終わったことで、皮肉にも彼らはセールス面でのプレッシャーからは解放され、のびのびと自分たちの音楽を追求した成果であるとも考えられます。
オープニングを飾る「Surrendered」は、軽やかに弾むイントロが正に直球ギターポップ!日本での解散ツアーでも、このアルバムから唯一披露されたこの名曲に始まり、サビのモリス兄弟のハーモニーが抜群にポップな「Baby, Back Up」、聴き手をそっと励ますようなメロディが胸を打つ「Hope And Jump」(
タイトルも素敵)など、ギターポップファンの涙腺を刺激する楽曲が続きます。
このように、アルバム全体としてはポップで落ち着いた雰囲気の楽曲が多くを占めますが、そこに前作路線のひねくれロックナンバー「Head On A Spike」や、「ブルトンのアルバムの7曲目は名曲」伝説にその名を連ねる(マークは「この曲嫌いだから演奏しない」って言ってましたが)キャッチーなギターロック「My Neighbour's House」が入ることで、比較的アコースティック寄りの楽曲が並ぶアルバムのアクセントとして機能しています。
また名曲・佳曲揃いのこのアルバムの中でも、9曲目の「The Last Song But One」(
タイトルどおりアルバムの「最後から2番目の曲」です)は、静かな歌いだしからクライマックスに向けて静かに盛り上がっていく、ブルトン史上に残るべき隠れた名曲です。
このアルバム発表直後にブリティッシュ・アンセムズというイベントで来日したときにも、この曲を最後から2番目に演奏していましたが、そこからラストの「If...」への流れは今でも忘れられません。
このアルバム発表後、2008年のマークのソロアルバムをはさんで、2010年のラストアルバム『A New Athens』を残し、翌年バンドは解散を発表。ブリットポップ終焉後は商業的不遇に苦しんだ彼らですが、約10年間にわたってインディーで活動を続け、その中でこのアルバムをはじめとする良質の作品を発表してきた彼らの音楽が、これからも一人でも多くのリスナーに聴き継がれていくことを、僕は信じています。