数多くの
京都の庭園を訪れてきましたが、素晴らしい景観を誇る庭ほど「小堀遠州」作庭という説明書きに出会い、その美意識に圧倒されながら観賞した思い出があります。
その小堀遠州が手掛けたか、手掛けたであろう庭、もしくはその影響を受けた庭の数々を美しい写真と丁寧な解説で紹介しています。全ページに欧文がつけられており、日本文化の神髄を世界に紹介する役目も果たしています。
茶道の世界では、千利休から古田織部へ、そして小堀遠州という系譜が語られています。戦国武将でありながら、その才能の冴えもあり、浅井、豊臣、徳川と仕えた主君に引き立てられ、幕臣の頃は伏見奉行として作事奉行として、近世の
京都の礎を作った功績は図り知れません。
何よりも、本書に取り上げられる作庭に関わったことが後世に影響を与えたわけです。近年の研究成果では、
桂離宮庭園も小堀遠州が作庭に関わったという説が強くなっていることから、まさしく日本の庭園の美を究極の姿へと導いたわけです。
本書の写真に写し込まれた造形美から、日本だけでなく世界中の人を魅了するオーラが感じられました。
目次は、小堀遠州の生涯、遠州庭園の魅力、遠州庭園と解説(金地院「鶴と亀の庭」 南禅寺方丈「虎の子渡しの庭」 元離宮二条城二の丸「八陣の庭」 仙洞御所庭園 孤篷庵「近江八景の庭」)、「伝遠州」庭園が語る「遠州好み」、伝遠州庭園と遠州好みの庭園の解説(
桂離宮庭園 曼殊院庭園 頼久寺「鶴と亀の庭」 龍潭寺庭園)、遠州の茶室 技法の奥に潜む美の真髄、小堀遠州の遺産とその後遺症(座談会)、小堀遠州の生涯(年譜)、庭園用語の解説、掲載庭園の所在地と交通案内。