雪の練習生
私もそうでしたが、ベルリン動物園の大スターだった北極熊クヌートに夢中になった人は多いと思います。なんであんなに可愛いのか、その裏に隠された秘密を多和田さんがシュールに解き明かしてくれています。
それでも三月は、また
ものがきが東日本大震災をどう感じ、どう表現したか知りたくて手にしました。
17人のうち知っている作家はわずか6名で作品を複数読んだことのある人は2名だけでした。
多和田葉子の「不死の島」は福島の人々が読んだらどう思うのだろうと少し心配になりました。
重松清の「おまじない」はとても分かり易く情景が印象に残りました。
川上宏美の「神様2011」は震災前にすでに発表されていた「神様」を再掲し、
次に震災後を反映した「神様2011」を並べる新しい手法です。
川上未映子の「三月の毛糸」は作家の力を再認識しました。
また日本版とイギリス版のカバーのデザインに毛糸玉が使われていますが、この作品の流れでしょうか。
「箱の話」には目眩がする程の衝撃を感じました。著者の明川哲也など全く知りませんでした。
小説ですが、全編が詩です。
詩人でなくては書けないと思い、少し調べてみたらあの叫ぶ詩人ドリアン助川氏の別名でした。
この人の作品に触れただけでもこの本を買った価値がありました。これぞ文学による昇華でしょう。
「日和山」は具体的な日常を綴る佐伯一麦ならではの期待を裏切らない作品です。
デイヴィッド・ピースの「惨事の後、参事の前」は芥川竜之介や川端康成、今東光が体験した関東大震災が素材です。
ものがき一人ひとりの感じ方、表現、つたえたいもの、昇華の仕方を知り、そしてその力が見えます。
本書は著者印税と売り上げの一部が震災復興のために寄付されるそうです。
新刊を買って読みましょう。
犬婿入り (講談社文庫)
「犬婿入り」は芥川賞を取って当たり前の完成度だが、私には理解できない作品だった。
イヤだったのは、「ペルソナ」。ヨーロッパ圏の言語を話し、その国の人々を生活を共にする。
たまに、街のショーウィンドーに映った顔は、能面のようで、自分の物だと気付いた時に立ちすくむ、喪失感。
そんな体験を、皮膚の感覚で伝えるのが「ペルソナ」だ。