時代屋の女房 [DVD]
昭和50年代、古きよき時代の東京下町の商店街を背景に繰り広げられる、屈折した男女の愛の展覧会のような作品。直木賞を受賞した原作は絶版になっているので、ネット古書店で手に入れたが、この作品に関しては、映画の方が、原作よりも優れているように思う。おそらく映画史上に残る名作の一つであろう。
主役の真弓と作中のエピソードに出てくる美郷の二役を若くして逝った夏目雅子が演じているが、始めてこの映画を見たとき、夏目雅子のあまりの美しさ、可憐さに驚いた。彼女の光り輝く美しさ、気品ある華やかさ、愛らしさはこの映画によって永遠に後世に残されることだろう。
夏目の相手役、時代屋の主人安さんを、若き日の渡瀬恒彦が、夏目に答えて、すばらしい名演を演じている。
夏目の大胆・鮮烈な演技と渡瀬の表面淡々としながらも愛の苦悩あふれる迫真の演技が本編最大の見所であるが、 助演者も力量ある俳優を揃え、それぞれに好演で、特に津川、中山、名古屋、平田などさすがと思わせる。
原作は短編に近い短さで、主人公はじめ主要人物も薄墨色の背景のなかに沈んでいる。人物も映画ほどに魅力的ではない。それに対し、本編は、人物の一人一人にスポットライトをあて、鮮やかに背景のなかに浮かび上がらせた。どの人物も魅力的である。原作を超える名品という所以である。
俵屋の不思議
おそらく私には一生縁が無いと思われる京都の高級旅館「俵屋」
そこに関わる人々越しに京都文化を伝える素晴らしい本でした。
槙のお風呂を専門に洗う(磨く)職人さんの存在を私は初めて知りました。
大工さん、左官さんなど建物に関わる職人さん、お庭、調度品、家具に関わる職人さん。
関わる全ての人々が「俵屋」の魅力を紡ぎ出しているのだと感じました。
著者である村松友視さんの品のある、無駄のない文章がその魅力をよく伝えてくれています。
先日、外観だけでも…と「俵屋」を見に行きました。
ちょうど工事中で多くの業者さんの車が停まっていました。
どっしりとした建物を囲う長い壁は、やはり出入りする者を選んでいるような厳格な雰囲気でした。
さすがに宿泊することはできませんが、お豆腐やさん、お漬物やさんなど食べ物系のお店ならほんの少し気分を味わえるかも…と、次の京都へ行く際の楽しみが一つ増えました。
帝国ホテルの不思議
高評価なので夏休みに読んでみました.恐らく自分は著者の文体が苦手なのだと思いますが,
広報誌をまとめたものかと思ったほど,お追従的な記述が鼻について,読み進めるのは難儀でした.
仕事関係の催しやら披露宴,謝恩会出席などで年1,2回足を運ぶ程度で,メインバーに時折足を運ぶという筆者のような
常連ではないのですが,帝国ホテル自体はきっと素晴らしいのだろうと思います.
しかし,様々な書評欄で高評価だったのにも関わらず,週刊誌のルポ記事(実は広告)と似たような読後感を持ってしまった
(帝国ホテルから受ける印象が安っぽくなってしまった)自分は何か間違っているでしょうか..
時代屋の女房 [DVD]
この女優が亡くなって何年が過ぎたのか。今、見てもやはり美しい。彼女が安っさんに言う、”何も聞かないのね・・・、だんまりスケベ!”。この台詞が最高に好きだ。彼女の演じる映画は他にも、話題をさらった幾つかのものがあるが、僕はこれが一番気に入っている。今、たまたま、この映画の舞台になった大井町の傍で働いている。彼女が今でも、あの交差点に傘をさして佇んでいるような気がする。この映画と共に、書籍「夏目雅子 27年分の笑顔」を進めます。昔は、こんな素敵な女優がいたんだよ