カンフー・パンダ2 ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]
食いしんぼで太っちょで、でも底抜けに陽気でやかましいパンダちゃん。
構造的にはよくある貴種流離譚プラス痛快アクションなんでしょうけど、前作も含め「師匠・親との軋轢・葛藤」が根底に流れる苦くて思いバックボーンがただのドタバタコメディに堕落するのを防いでいます。
アメリカは、今、親と子の断絶に悩まされているのでしょうか?
本作の主役のひとり、白孔雀のシェンは羊のオババに予言された自らの未来を変えようと過激で残酷な行動に出てしまい、両親が見せた「恐怖」に怒り、追放の後も恨みと憎しみを育てます。
このオババが余計なことを言わなければ問題はなかったんじゃないか、少々の暗黒麺を備えようとも良い補佐なり摂政なりをつけてあげれば優れた知能でいいアイデアを生み出して国防や人材育成にまい進できた王子様だったんじゃないかと思います。
前作のタイランは「師匠に愛されていない」ことをものすごく気に病んで「オレを誇りに思うと言え」と強要しました。本作のシェンは「親に愛されていなかった」という自分で作った設定にどっぷりひたり、自暴自棄のあげくに自滅します。
パンダのポーは義理のお父さんがとにかくすばらしい。毎日ラーメンのことを考えて、工夫して、努力して、世界一の味を作り出したお父さん。ありったけの愛情で、愚かでも、弱くても、一流の職人として、そしてひとりの人間としてポーを心の底から大事にしてくれています。このお父さんを生み出したことだけでも本シリーズは高く評価されるべき。
中華民族は世界中どこにでもたどり着き、「美味しい食べ物」で根付いていって、そこから師弟に教育を積ませ、世界のトップを目指していく。そのたくましさ、力強さを私は尊敬するものです。
前作でも本作も、そのお父さんの言葉がきっかけでポーが覚醒する場面があり(覚醒しすぎですけどw)、愛情と信頼があれば人(いや、それこそパンダでもw)はきっとなんだってできるのだろう、と思わされました。
そしてアメリカは敗者にも優しい=這い上がるチャンスを与える社会、と思っていましたが、そんなに甘いものではないのかもしれないと本作を見ていて痛感します。暗黒面の恐ろしさ・・・脚本、演出で茶化されながらも狂気を存分に表現している悪役のシェンの恐ろしさ。
吹き替え版は木村佳乃さんが素晴らしかった。こんなにうまいとは思いませんでした。セクシーかつ上品で陰影があって美声です。声で演技できる稀有な女性。この吹き替えで彼女のファンになりました。
本作のラストに「ええっ!?」という驚天動地のヒキがあり、「つ・・・続きが見たいっ!」と叫んでしまいました。まことにニクい演出です。