枕橋の御前 女剣士 美涼1 (二見時代小説文庫)
枕橋の御前と呼ばれる旗本の若隠居「本多隼人正」と彼の養女であり弟子でもある美少女剣士「美涼」、
そして美涼に危ういところを助けられた島帰りの大店の長男坊「竜次郎」の3人を中心に物語は展開します。
まず面白いのは隼人正と美涼の関係。
養父養女の親子関係なのか、剣術の師匠と弟子の関係なのか、将又、お互い惹かれあっている歳の差、訳ありの男女なのか?
全てにおいて二人の腹の探り合いと駆け引きが面白く、また、お互いそれを楽しんでいるかの様です。
竜次郎他の周囲の者にとっては全く持って「ややこしく面倒な二人」に過ぎませんが、
親子、師弟、男女のそれぞれの立場立場での心の機微を微妙に描いており面白いと思います。
作品の描き方もちょっと趣向が凝らしてあります。
物語の途中途中に隼人正と美涼との出会いを入れるなど再三場面が飛びます。
隼人正と美涼を襲う刺客との戦いなど楽しみです。
ホームレス博士 派遣村・ブラック企業化する大学院 (光文社新書)
面白いといっては著者に失礼ですが、大変興味深く一気に読んでしまいました。私も少しはその内情を知っていますが、特に文系の学生にとっては、大学院を卒業することが実は「日本人としての無難なライフサイクル」のレールから外れる事だ、という現状を概ね正しく伝えていると思います。
学生・若者をめぐる就職問題については、その時々の景気に大きく左右される学部生の新卒の就職対策だけでなく、企業・社会の学歴に対する考え方・評価に由来する大学院卒への取扱いの方が重要かつ深刻な問題だと思います。
また筆者がその処方箋として唱える「プライドを捨てて実を取ろう」の実践として、さりげなく(というには分量が多すぎですが)自己紹介と専門分野の研究の紹介を折り込み、ご自身の就職活動に繋げようとしているところに筆者の心境の変化と言うか逞しさを感じることが出来て、別の意味でちょっと感動しました。
楊令伝 12 九天の章
英雄たちが老い、次の世代へと
移り変わっていく。
国の形も変わり、梁山泊も国づくり
を行っている。
豪傑たちの死に場所がいくつか
描かれているが、寂しさは拭えない。
史実とも水滸伝ともかけ離れ、
どこに向かうのだろうか?
楊令伝 13 青冥の章
正直、『水滸伝』から『楊令伝』に入ってからは物語の規模が拡がり過ぎ、展開を制御し切れなくなった感があるが、それだけ壮大な物語を描き切ったことに敬意を表したいです。
そして、『水滸伝』が初めて刊行された2000年以来、気力を活力を与え鼓舞し続けてくれたことに厚く熱く感謝したいです。