A Nod to Bob: An Artists' Tribute to Bob Dylan on His Sixtieth Birthday
本作は、ディランの還暦を祝って、Red House Recordsのアーチストが集まって作り上げたトリビュート・アルバム。本作の特徴は、例外もありますが、エレキ・ギターを使わないでアコースティック・ギターとヴォーカル中心のアレンジの曲が主になっていること。ディランの名曲を静かに味わいたい時にぴったりの、癒しになる作品です。ディランの曲は女性ヴォーカルでも不自然さを感じさせず、素敵な作品に仕上がることが多いですよね。本作もその例外ではなく、1曲目のラブ・マイナス・ゼロ/ノー・リミットで作品の世界に引き込まれます。11曲目、13曲目も女性ヴォーカルのアレンジで繰り返し聴きたくなります。もちろん男性ヴォーカルの曲も素晴しく、ディランの名曲はやはり本作でも光を放ち、4曲目、6曲目、9曲目、15曲目といった世紀の名曲にはしびれます。原曲の味をそこなわいアレンジが実に魅力的です。8曲目はフランス語による神が味方ですが、違和感は全くありません。最後をランブリン・ジャック・エリオットのおそらくライブ・ハウスでの昔語りのMCと演奏で締めるのが憎い。曲の後の"Happy birthday, Bob."というさりげないメッセージが心に響きます。結論として、数多あるディラン・トリビュート・アルバムの中で五指に入る傑作として大いに推奨します。