GOSICK 知恵の泉と小夜曲(セレナード) 「花降る亡霊は夏の夜を彩る」
正直なところGOSICKでキャラソンの展開は期待していなかったです(時代背景的にも)が、唯一歌唱センスが壊滅的なヴィクトリカの歌どうするんだろう?と興味を持って聴きました。
それぞれのキャラの雰囲気にあった歌で、ヴィクトリカも悠木碧さんが前面に出たまっとうな歌唱でした(Tr6)
。
あぁやっぱりと思っていたところ最後のボーナストラックでまごうことなきヴィクトリカの歌唱。これがなかったらレビュー書いてないかも(^^;。Original Verは伊達じゃない。
ドラマは飽くまでトッピなこともなくアニメ版のノリそのままな雰囲気で大変結構でした。
伏(ふせ) 贋作・里見八犬伝 (文春文庫)
文句なく面白かった。時代小説が苦手な私でさえぐいぐい読み進めることができた。
人間の姿をして悪行の限りを尽くす犬人間「伏(ふせ)」が跋扈する江戸。身寄りがなくなり兄の動節を頼って江戸にやってきた山出しの狩人少女、浜路。この兄妹が伏に掛けられた懸賞金を目当てに狩りに乗り出す。と、これだけ書けばありがちな捕り物小説なのかと思うだろうが、里見八犬伝が絡んでくるのだ。作中で「贋作・里見八犬伝」を書くのは馬琴の息子の冥土。本編のなかにまるまる挿入された入れ子の小説を紐解くうちに伏の出自の謎が明らかになっていく。未完成のその物語は本編の終盤で浜路が伏のひとり(一匹)と対峙するときに、彼、信乃の語りによって収斂されていく。
浜路は狩るものだし、信乃は狩られるものではあるのだが、ふたりの足場はシーソーのようである。立ち位置が少しでもずれれば立場は逆転する。狩るはずのものが殺されることもあるし、逆もまたある。その瞬間ふたりはまったくの対等である。互いの立場が理解できるからこそ、その瞬間に友情めいた感情がチラリと交わる。犬人間として生きなければならない孤独や哀しみを初めて理解したのは浜路ではなかったか。「生きる痛みを忘れるために美しいものを見る」それは犬人間としての粗暴さとは真逆な描写なのだが、信乃がふるさとの森で見つけた蛍をガラス瓶に閉じ込めて大切に持ち歩いているさまが、伏として生きなければならない彼らの哀しみと孤独をよく現しているように思う。爽やかな読後感だった。
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 上
最初原作のあらすじを読んで暗そうだったので、この話は好きになれないだろうなと思って読まなかった。でもコミック化のイラストが好みだったので試しに上巻を読んでみたら見事にハマってしまい、翌日には下巻を買うハメに・・・。
藻屑のキャラも最初変じゃね?って思ったけど、山田なぎさの気持ちになって読んでいるとだんだん惹き込まれていった。
ラストは分かっていたけどどうにもやり切れなくて泣けた。
でも兄貴に関しては光が見えたし、時間が立つにつれて納得できたように思う。
ウサギの件などはちょっと分かり難かったので、原作も読んでみたい。
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫)
海辺の町に生きる、どこにでもいるけど少し不幸な女子中学生・山田なぎさは、自分を人魚だと名乗る転校生・海野藻屑により、いままでの生活が狂わされた。家族のため、兄のために、生きるための実弾を欲しがっていたなぎさと、砂糖菓子の弾丸を撃ちまくる藻屑の奇妙な友情を描く青春暗黒物語。
この文庫は最初富士見ミステリー文庫出だされたそうで、ゆるやかなロングセラーにより、新書になって再出版された。
私はこの本で初めて読んだので、これが挿絵付きのライトノベルで出版されていたというのは不思議な感じがした。万人向けではないかもしれない独特な雰囲気を持っていたから。
タイトルからしてそうだけど、言葉の使い方が絶妙で、この人の文章センスが好きだった。
そして物語は冒頭から、ラストがどうなるのかはっきり示されていた。
そう、読み始めた瞬間、残酷な結果を提示される。
でも、そうならないで欲しい。そんな気持ちで読み進められるほど、痛々しくて切なくて、そしてちょっぴり息苦しい物語。
実弾を求める少女。砂糖菓子の弾丸を撃ちまくる転校生。貴族の兄。
みんな生きるために、自分を守る膜を張っていた。それは誰かのために働くことであったし、嘘で身を守ることでもあったし、自分の世界に閉じこもることでもあった。
痛々しくたたきのめされながらも、現実は死んじゃった子と生き残った子の2種類しかいない。
儚さと無力さを見せつけられる様なお話でした。
良質なラノベは退屈な文学を上回るのだ、と証明している一冊だと思います。普段ラノベを読まない方にも、お薦めです。
GOSICKVIII下‐ゴシック・神々の黄昏‐ (角川文庫)
桜庭一樹の作品の中でも代表的なシリーズであるGOSICKの最終巻です。
先行して最終回を迎えたアニメと基本的なプロットは同一で安定したハッピーエンドであり、
ハッピーエンド至上主義者の私は安心して読めました。また、ヴィクトリカがなぜ銀髪になったのか、
久城とヴィクトリカが再開後どのような人生をたどったかなどの説明が補足されている点は個人的には楽しめました。
しかし、逆に言えばアニメを見ていた人には、新鮮に感じる展開は無く、
またアニメでは小説の方に説明を投げた(例えばアニメではヴィクトリカが銀髪になった理由は全く語られません)
ともとれるのでこれは評価が分かれるところかもしれません。
個人的に最も引っかかった点は、最終巻だからある程度は仕方ないとは思いますが、
完全にボーイ・ミーツ・ガールの文法で、ミステリの要素が殆どないことです。
一応ミステリシリーズである以上は何らかの読者が推理する展開を入れておくべきだと思うのですが・・・
もちろん、上巻で最終的な謎を久城がヴィクトリカに提示して、下巻でそれの答えが「愛」であるとしているとか、
オープン・エンディングを読者への最終的な謎として提示するなどの解釈はできますが、月並みといえば月並みにすぎます。
ともあれ、読んでいて気持ちのいいハッピーエンドは大好きなので概ね満足でした。