最強の経済学者ミルトン・フリードマン
<マネタリスト、シカゴ学派、新自由主義の元祖、レーガン、サッチャー政権に大きな影響を与えたノーベル経済学賞受賞者……。>というのを読むだけでも唾棄すべきエコノミストと思わせるに十分だが、意を決して読んでみた。しかし、さらに・・・・。
フリードマンが、廃止すべき14の政策として掲げた次のような項目が、コイズミ改革と併せて称揚される「反知性主義」には暗澹たる気持ちになる。
●農産品の政府による買取保証価格制度●輸入関税または輸出制限●家賃統制、全面的な物価・賃金統制●法定の最低賃金や価格上限●細部にわたる産業規制●連邦通信委員会によるラジオとテレビの規制●現行の社会保障制度●特定事業・職業の免許制度●公営住宅●平時の徴兵制●国立公園●営利目的での郵便事業の法的廃止●公営の有料道路。
アマゾンがご丁寧にも掲げてくれているこれらの項目を心して見られよ!
ほとんどアナルコ・キャピタリズムの世界である。現に合州国では、●現行の社会保障制度などというものは無に等しい。我がニッポンでもコイズミ・タケナカ路線によって●営利目的での郵便事業の法的廃止が軌道に乗ったことは周知の通り。社会保障については、介護保険の導入を評価する向きもある(上野千鶴子)。それはともかく、社会保険全般において、制度問題のみならずフリードマン路線が着々と進んでいることは、テレビCMのアメリカ保険会社の盛況を見れば明瞭たるものあり。
そういえば、学生時代フリードマンの主著『選択の自由』を読まされたことを思い出した。フリードマンは、ハイエクや師のフランク・ナイトとは異なる。特に後者の師匠に破門されたことをマネタリストシンパは心する必要があるとだけいっておこう。
リチャード・ホフスタッター『アメリカの反知性主義』では、扱っている時代の相違もあってフリードマンには触れていないが、フリードマンこそ現代世界の(勿論ニッポンの)反知性主義の「巨匠」なのである。彼を称揚する御仁は、せめて環境問題のことくらいでも思いを馳せてみればよかろう。
碌でもないアル・ゴアすら、ケネディすらまともに見えてくる。チャベス頑張れと言いたくなるではないか!
インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実 [DVD]
サブプライムローンは日本でも「ゆとりローン」と名を変えてもてはやされた。
1億総中流と言われた(最近は差が付いているが・・・)日本人でも、ある年を境に突然支払額が上がる
このシステムに安易に乗って、あとで泣きを見た人がたくさんいる。
アメリカは階層社会なので、70%くらいの世帯は収入的にも結構キビしい人たちだ。
その人たちでも「夢の一戸建て」が買える!という「幻想」を商品化したことで、結局大混乱に陥った。
本作では「金融界の暴走」が責任という見方をしており、それは正しいと思うが、
一方でその「幻想」に乗って「なんちゃってアメリカンドリーム」を体現しようとした国民にも責任はあるだろう。
サブプライムで家を買うばかりか、メルセデスのCクラスあたりも購入。この資金はその家が担保って、どう考えても
おかしい。でもそれに気付かないほどに全米は熱狂していたのだ。
本作はあくまでマクロな視点で金融界を批判しているが、劇中にあるように「ヘタな戦争よりもコストが掛かっている」
という事実には愕然とする。その原因は規制緩和だ、というのが単刀直入で良い。
アメリカが風邪をひくと中国に感染する、という図式もわかりやすかった。
でもあまりに日本の影が薄いのが残念。経済に関しては語るべき必要のない国になってしまったか・・・
まあ、でも同じ経済大国のドイツも登場しなかったから、良しとしよう(笑)。
政治家も企業の重役も、逃げに入ると日米共通だなあ、と思うが、人間カネが絡むとこうなってしまうのだろうか。
1910年代のハリウッドもまだロクな課税がなく、ゆえに当時のスターたちはカネや麻薬に溺れたというが、
まさにこの再現ともいえよう。
最盛期の早川雪洲は現貨幣価値で年間40億円を手にしていた。それもほぼ無課税だったので、100年前に自家用
飛行機を持っていた(笑)。ちなみにチャップリンはその2倍近い価値の金額を得ていたという。
特典映像は12分ほどあるが、メイキングというよりも本編の続き、といった感じだ。
さすがソニーのマスタリングだけあり、DVDでも十分な画質&音質だと思う。星は4つです。
生きがいの創造―“生まれ変わりの科学”が人生を変える (PHP文庫)
生まれ変わりについては、賛否両論あると思います。
親しい人を亡くされた方や生きてることに
悩んだときなど、きっと救われる部分があると思います。
読んだ人が「どうせ生まれ変わるんだから今はどうでもいいや。」ではなく
「だからこそ精一杯生きるんだ」みたいになったら良いなと思います。
この世で一番おもしろいミクロ経済学――誰もが「合理的な人間」になれるかもしれない16講
2012年に読んだ本No.1候補。
小学生でも読めます。
経済学を全く知らなくても読めます。
経済学がキライでも・・・多分読めます。
経済学が何を対象にしていて、どういうことを考えているのか、
大変わかり易く書いてあります。
「個人の合理的行動」から入って、複数人の行動の相互作用を考える「ゲーム理論」、
さらに多数の個人が存在する「市場分析」へ行く流れも好きです。
経済学において非常に重要な考え方である「パレート効率性」についての解説もよい。
大学でやる小難しい教科書の理論も、この本に書いてある概念を知っていると
理解度が段違いだと思います。
経済学部への進学を考えている高校生にぜひ読んで欲しい。
経済ってそういうことだったのか会議 (日経ビジネス人文庫)
経済学の難解な予備知識などはまったく不要。働いてお金をもらった経験があれば、誰でも読む資格あり。お金、税金、労働などのテーマについて、佐藤氏、竹中氏が討論するのだが、例もわかりやすく、なによりほのぼのとした雰囲気が伝わってきて好感が持てる。なんといっても感心するのは、佐藤氏の質問の鋭さ。この突っ込みに苦笑しながらも懇切に回答する竹中氏の様子が伝わってくる。電車やカフェで気楽に読むのにいい。
ただ対話形式で各章が独立しているので、第1章から必ず読み始める必要がない分、体系だってはいない。構成された初歩解説本ならば、細野真宏氏の「よくわかる経済」シリーズがいいだろう。