What Would the Community Think
次回作「MOON PIX」ほどの構成力は感じないが、
過去の作風からの転換期的な作品で、変化の予兆が感じられる作品。
中でも、割とメロディアスなチューンの「Taking People」は、
ちょっと心に迫る曲。「完璧な人生」をモチーフに、完璧ではない
「あなた」への愛着を歌う、意地悪な優しい歌です。
全面に漂う、砂漠のようにドライで混沌とした雰囲気は、
CAT POWERが「COMMUNITY=社会というもの」に抱いてる心象か。
きっと彼女は、安易に走りやすい大衆的な考え方に、
ちょっと嫌悪感を抱いてるのかもしれない。
メランコリックな味わいのある作品です。
Messenger
ロイス・ローリー"Gathering Blue"の続編。
今回はマティ(前編ではマット)が主人公。虐げられた者、逃亡した者たちを受け入れて作られた村で、マティは見者と呼ばれる人と暮らしている。マティにも役割があって、それは村と外との世界を行き来してメッセージを運ぶことだ。というのも、彼だけが村と外の世界の間に広がる森の道を迷わずに旅することができるからだ。マティはいつか「伝令者」という真の名で呼ばれることを期待している。
平和なこの村にも異変が訪れる。いつの間にか人々が交換市でものを欲しがり、ついには自らの心をも引き換えてしまい始めたのだ。率先して人々を受け入れ教育を施してきた助言者が、一転して「村を外界から閉鎖する」嘆願を主導するようになる。村長の役を司る指導者も、ついには村人の意志を受け入れざるをえなくなる。
マティは「村の閉鎖」という最後の伝令を運ぶことになる。彼は外界で暮らす見者の娘を村に連れて来ると心に決めて、邪悪に満ちてきた森へと出発する・・。
次第に重苦しくなった末に希望の光が見えるという展開は前作と同様。ラストはこれしかないのだろうが、次回へ向けての引きという印象は否めない。もちろん、誤解のないように言っておくと、独立した一編として読める。
レイヴ・オン・バディ・ホリー~バディ・ホリーへ捧ぐ
注:輸入盤を聴いての感想です。曲目は同じのようですが、この国内盤はSHM-CDになっている模様です(輸入盤は通常CD)。
本作は、2011年発売のバディ・ホリーのトリビュートアルバム『RAVE ON BUDDY HOLLY』です。
参加アーティストは、ポール・マッカートニー、フィオナ・アップル、パティ・スミス、ルー・リード、グラハム・ナッシュほか、そうそうたる顔ぶれ。手抜きのない、クオリティの高い仕上がりに満足です。
曲目および参加アーティストは以下の通り。
1. Dearest - The Black Keys
2. Everday - Fiona Apple & Jon Brion
3. I'ts So Easy - Paul McCartney
4. Not Fade Away - Florence + The Machine
5. (You're So Square) Baby, I Don't Care - Cee Lo Green
6. Crying, Wating, Hoping - Karen Elson
7. Rave On - Julian Casablancas
8. I'm Gonna Love You Too - Jenny O.
9. Maby Baby - Justin Townes Earle
10. Oh Boy! - She & Him
11. Changing All Those Changes - Nick Lowe
12. Words of Love - Patti Smith
13. True Love Ways - My Morning Jacket
14. That'll Be The Day - Modest Mouse
15. Well All Right - Kid Rock
16. Heartbeat - The Detroit Cobras
17. Peggy Sue - Lou Reed
18. Peggy Sue Got Married - John Doe
19. Raining In My Heart - Graham Nash
内容は、まず冒頭のザ・ブラック・キーズによる、渋い『Dearest』からして、もうすでに素晴らしいのですが、
私の主な購入目的だった3曲目、ポール・マッカートニーの『It's So Easy』が、とにかく力強くて、ヘヴィーなアレンジで良かった。
スタジオ録音とは思えぬほど熱気をはらんだ演奏で、もう60代も終わりに差しかからん年頃であるはずのポールの、ハイテンションな、貫禄の、今が絶好調とばかりの歌唱を聴くことができます(これだけ聴いても元気がでると保証できます)。
ほかにも2曲目、フィオナ・アップルとジョン・ブリオンのデュエットによる素直な『Everyday』、カレン・エルソンの可愛いらしい『Crying, Wating, Hoping』、She & Him による透き通った歌声の『Oh Boy!』など、それぞれが素晴らしく、気に入りました。
全体として、オリジナルに近いアレンジのものもあれば(たとえば Everyday、Maybe Baby、True Love Ways など)、かなり、それぞれのアーティストの個性が出ているもの(Words of Love、That'll Be The Day、Peggy Sue など)もあります。
だから、トリビュートアルバムを聴く醍醐味であるところの<彩り>という点では、むろん楽しむことも出来ますが、しかし一方で、全体にレトロな雰囲気を残すことも忘れない、まとまった1枚であるとも言えます。
バディ・ホリー好きの方はもちろん、誰か注目しているアーティストが1人でも参加しているという方なら、どなたでも楽しめる仕上がりだと思います。
(ここからは私見ですが、)あえて不満な点を申すなら、僕が好きなバディ・ホリー・ナンバーである『You've Got Love』『Listen To Me』が入っていないこと。
そんなにメジャーじゃないのか、偶然もれたのか、わかりませんが、予めわかっていたこととは言え、すこし残念でした。
そして音楽そのものに(それこそオリジナルのバディのような)<温かみ>が感じられぬこと。
しかし、これは現代のほとんどの音楽に僕が感じていることなので、今更どうのこうの言いません(ポールは温かいですよ。温かいをこえて「熱い」です)。
いずれにせよ質の高い仕上がりなので、星5つ、おすすめです。