朱夏 (新潮文庫)
「朱夏」は宮尾登美子氏の、「櫂」「春燈」に続く自伝的小説の3作目。
18歳で田舎の教師と結婚し1女もうけ、そして男達は野望と、金銭面、そして
戦争からの逃げとし、開拓民とともにその子どもらの学校を設立する・・・
という目的で満州に渡る。
が、満州の生活にお嬢様育ちの綾子が耐え切れるはずなく我がままほうだい
だったが、終戦・・・襲ってくる挑戦民、難民キャンプで『野良犬以下』の
生活を強いられ、次第にたくましくなってくる綾子に目を見張るものの、
相変わらずの《お嬢さん》に、読み手としてはイライラしてくる場面もある。
しかし、戦後満州から引き上げてくる形を小説として読みやすく
まとめてあり・・・終戦後の大陸移住日本人について、初心者からわかりやすく
読み進められる。
藏 [DVD]
降旗康男監督の、透明感ある映像と、さだまさしのスケールの大きな音楽(ロシア民謡を取りいれた酒仕込のBGM)の中で、蔵のストーリーは繰り広げられます。
旧家の後継ぎに恵まれない家の当主意造とその妻賀穂、最後に授かった娘・烈は盲目になっていく。賀穂の妹で、烈の世話を母親代わりに育てた叔母・佐穂は後添いになる心つもりだったが、義兄は花街から若い芸奴を後妻にして佐穂の想いは閉ざされてしまう。美しく賢く育った烈を見て「盲目でなかったらどんな婿でも取れたのに」と苦悩する意造の予想を裏切って、烈が恋い慕ったのは身分違いの蔵人の涼太だった。周囲の猛反対を押し切って、烈は想いを遂げてめでたく涼太と結ばれる。意造も佐穂と暮らすようになり、ストーリーは大団円を迎えます。
ここに出てくる人々は、今の日本人が忘れた「真摯」「謙譲」「忍耐」などの美徳を彷彿とさせます。見終わった後に一服の清涼剤を飲んだ気持ちになります。
櫂 [DVD]
五社英雄作品は正直あまり好きではない。僕にとって「雲霧仁左衛門」は成田三樹夫が最高かっこよかっただけだし、「吉原炎上」もお子ちゃまの僕には、いまいち何をいわんとしているのかわからなかった。ただ、この作品は好きです。耐え忍ぶ女の情と性を見事に描き出している。宮尾登美子原作の映画は「序の舞」に続き二本目、今のところはずれはない。「鬼龍院〜」はまだ観ていないので、観たくなった。三樹夫氏も出てるし・・。名取裕子はこの作品と「序の舞」にも出ていた。「序の舞」では見事なヌードを披露していたが、この作品の方が脱いでもいないのに、とても艶っぽかった。こんな女優さんも最近いないな・・。セクシーな女優は増えたが、色っぽい女優は皆無に等しい。寂しかぎりである。
NHK大河 義経 総集編 [DVD]
日本史に名を刻む悲劇の若武者・源義経の生涯を描いた、NHK大河ドラマ「義経」が2枚組DVDで登場!「義経誕生」「軍神降臨」「英雄伝説」の3部構成で綴る総集編。出演は滝沢秀明、松平健、上戸彩ほか。 見たほうがいいです。
東福門院和子の涙 (講談社文庫)
これまであまりとりあげられることがなかった東福門院の生涯。徳川将軍家の娘として生まれ、家康の五女市姫が夭逝したばっかりにその代役として入内しなければならなかった運命。幕府と朝廷を結ぶ政略結婚の具とされたというイメージが強かったけど、この原作を読んで、改めて和子の聡明さと彼女が果たした役割の大きさが理解できました。彼女は決して自分の生んだ興子内親王の即位(明正天皇)を望んではいなかったのではないか?我が夫・後水尾帝と他の女性との間にできた親王こそ即位させることが彼女の後半の人生の目標ではなかったのかと思います。そうして、また彼女は本阿彌光悦や雁金屋(尾形光琳・乾山)との交流・庇護を通して京都町衆文化の発展に寄与したことも納得できました。これまで和子はテレビドラマの世界では、酒井美紀(2000年NHK葵三代)片山美穂(1989年NHK春日局)杉田かおる(1989年関西テレビ大奥)野際陽子(1988年長七郎江戸日記)山口いづみ(1987年江戸城風雲録怒涛の将軍徳川家光)三浦リカ(1978年柳生一族の陰謀)などで演じられてきましたが、みんな脇役です。和子をヒロインにしたドラマが見たいです。