神戸に明治・大正・昭和と限りなく大きく発展した総合商社「鈴木商店」があった。既に城山三郎氏によって、「鼠−鈴木商店焼打ち事件」というノンフィクションノベルが刊行されている。会社の経営の詳細などは、こちらに譲るとして、「お家さん」は、「お家さん」という女主人が自ら語るように、ゆったりとした播磨言葉で書かれた物語である。しかし、スケールがとてつもなく大きい。砂糖を扱う問屋が、樟脳、船、繊維、たばこ、酒類など、台湾、ヨーロッパ、アメリカへと、相手国と取扱う品目を広げていく総合商社へと成長。その一方で創業当時からの家族的な社風と忠義の心。鈴木商店の社員とその家族の物語である。
女性の生き様をダイナミックに描いた作品であると同時に、理想的な企業の姿を描いた作品でもある。両方の意味で、こんな時代だからこそ、多くの男性、女性に読んでもらいたい。関西では爆発的に売れているらしい。映画化の話もあるとか。
昔、神戸に「鈴木商店」という商社があり金子直吉という人が大会社に育て上げたが、金融恐慌で倒産し、その分社として現在の日商岩井や神戸製鋼等があるということは知っていました。しかし日本を代表する多くの大会社の前身でありながら、鈴木商店がどのような会社であったかはベールに包まれています。本書では「米騒動」時において鈴木商店が焼き討ちにあった事件を中心に非常に詳細な取材を行っており、それに派生して当時鈴木商店がどのような仕事をしており、どのような社風であったか。そしてそこに働く人たちのポジションや派閥がどうであったか。金子直吉がどのように会社を考えていたかが非常にリアルに分かります。いろいろな小説を読んできましたが、ここまで徹底的な取材を行った本は初めてで、非常に感動しました。
上下巻とも拝読しましたが、著者の想像に依拠しているのではと感じられる部分が多く、とくに直接話法で語られる重要人物の心の動きには違和感を覚えました。たいへんな労作とは思いますが、終始その違和感が離れず当惑を覚えました。当時の人物像に取材したフィクションと思って読めば楽しめるかもしれません・・・・。
久しぶりにおもしろい小説に出会えました。次がどうなるのか、待ち遠しくて、上下巻1週間で読み終えました。 それにしてもこの時代の女とは、哀しい存在でした。良家の子女であっても(だからそうとも言えるけど)、嫁ぐまでは親の庇護のもとにおかれ、嫁いだら夫の庇護のもとでしか生きられない存在。死別したり離縁すれば、戻る実家はあってもまた親の世話になり、次の嫁ぎ先を見つけてもらうのを待つしかない。それがかなわず親に死なれたり実家にいられなければ、ひとりで生きていく術をもてなかったのですから。でも、この小説の沙耶子がそうであったように、ひとりでも生きていけるようになりたい、と願う女性たちの地道が闘いがあったからこそ、女は今の時代を享受できるようになった。たった100年前はこうであった、ということを忘れてはいけないと思いました。
ドクスメマスターに強引にすすめられること半年前。。今日ようやく完読しました。。最後は感動で涙が。事業経営をなされている方などには特におすすめです。松下幸之助氏がいう「人を創る」という意味が良くわかりました。http://www.ryota.jp/
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