一般に、エースをねらえ!と言えば宗方生前の前編が本質と言われることが多いようだが、これには断じて異を唱えたい。大きなドラマのうねりを見せる前編が一見派手だが、エースをねらえ!の本当の核心は、実は宗方の死後、文庫で言えばこの7巻から開始される。 まさに圧倒的。ほとんどこれは宗教に近い。この圧倒的な精神性の高さを、これから読む読者全てに感じてほしい。 エースを良く知っている人間は、「スポ根」というジャンル分けを聞くとキョトンとする。おおよそ、このドラマほど「スポ根」という言葉が似合わない本は無いだろう。人を高い所から引っ張り上げようとする、その強引さが社会現象にまでなって多くの人間に影響を与えた、圧倒的なドラマがここにある。近年放映された、TVドラマの陳腐さとは真逆の世界がここにある。
「劇場版なんたらかんたら」というアニメの中で屈指の完成度を誇るのがこの「劇場版エースをねらえ!」です。思えば出崎監督ほど不遇な人はいません。宮崎・富野・押井監督らとなんら遜色のないキャリアながら、メディアへの露出の少なさゆえその評価が世間ではあまりされていません。悪いことはいいません。是非、この作品を観てください。演出、作画、どれをとっても完璧です。
うろ覚えですが、『三銃士』や『岩窟王』やアルセーヌ・ルパン(だったかしら) そんな色々な面白さを詰め込んだ作品を書きたいと作者がどこかに 書かれていました。確かに影響をうけています。 舞台は16世紀末エリザベス女王の統べる英国。 スペインとの宗教戦争のまっただなか、王家の血を引く双子と 美貌の敵国人、そしてかっこいい同国人たちの恋の物語です。 伯爵や公爵や女王陛下や枢機卿などがでてきます。 ジプシーや泥棒や海賊や幻のインカの伝説なんていうのもでてきます。 こんなタカラヅカ真っ青のような豪華な設定の少女漫画が昔はあって 週刊誌で毎週読むことができたなんて、とても幸せなことでした。 確かに微妙に荒唐無稽だったり、歴史の考証ミスはありますが、 たとえば『三銃士』の荒唐無稽が決して作品のキズではないように この作品の荒唐無稽さも、作者の執筆の勢いとして、光り輝くように 感じています。 また、この歴史考証はどうのこうのというのも少女漫画の読み方としては つまらないものだと思いますので、西洋史に詳しい方も目くじらを 立てずにロマンの旅にでてほしいです。 読後に、登場人物の名前の由来を映画スター、歴史上の人物 小説の登場人物などに探したりするのも楽しいです。 もしかしたら、暇人向きでしょうか。 残念ながら未完ではありますが、1部から3部まであり、各部で完結した ストーリーですので、十分楽しめます。 1部と2部だけ読むという読み方もあるかもしれません。 この作品の完結を願っていましたが、このような素敵な漫画に 子供のころに出会えただけでも、私は作者にとても感謝しています。 そして、とても才能のある漫画家であった山本鈴美香さんが少女漫画界から 早くに去ってしまわれたことを、いつまでも残念に思います。
まさに名作。高校生の登場人物たちがものすごく大人なのがすごい。特にお蝶夫人の凛とした姿勢には憧れる。
9巻からがいわば第二章に入る。宗方コーチを失って茫然自失状態になったひろみが周囲の人々に支えられて復活。いよいよ世界へ乗り出すまでが描かれるのだが、いくつか貼られた伏線が立ち消えになってしまっているのは当時の連載の事情によるのだろう。たとえばひろみの2人目のコーチの桂とお蝶夫人との関係(恋愛に発展するのかな、と思ったらそうではなかった)、桂がひろみに宗方と同じように惹かれたことをにおわすシーンがあったが、それも立ち消え。宗方によく似た神谷のテニスの才能と上達ぶりが描かれながら、その後の話がないままになってしまった、など。ないものねだりだが、それらの話も読みたかった…。
知る人ぞ知る少女漫画の名作。未完だが、四半世紀前の作品にもかかわらず、スケールの大きさ、画力のレベルの高さは驚嘆に値する。登場人物名にはさすがに時代を感じてしまうが、20年以上の長い年月に渡ってコアのファンをひきつけておく吸引力はさすが。 物語は16世紀末の宗教戦争を題材に、海賊、インカの秘宝、ジプシーに泥棒、王侯の隠し子、男装の少女など、冒険小説のアイテムをこれでもかというように詰め込んで豪華この上ない。同時代のベルばらに比べてけれん味があるところも却って魅力的だった。 何度も再開が報じられ、そのたびにファンはやきもきする羽目に。私も20年ほど前に購入したコミックを持っているのだが、今回未発表ネームがついているというだけの理由で6巻を購入してしまった。十数年前にも再開のうわさを聞きつけ、本屋に日参した覚えがある。作者は大風呂敷を広げすぎて収拾がつかなくなったのではないかという気もするし、今となっては再開されても画風や作風が変わってしまうのではないかという悪い予感もあるが、それでも、続きが気になってしかたがない。
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