晩年のリヒテルがインタビューされて、生涯をふりかえる、という構成。途中で奥さんが出てきたり、師匠が語り始めたり、おもしろいです。ものすごい名演もちょこちょこ挟まれつつ、海の映像なんかも挟まれつつ…体制とか権力とかそういう世俗的なものから極力離れて生きた、リヒテルに寄り添い共感できる内容になっています。映画としても、おすすめかもしれません(ストローブ=ユイレとか小津安二郎とかいけちゃう人は)。演奏家(またその生き方)にとって、印象的な言葉もぎっしり詰まっているすてきなDVDだと感じました。 〈謎(エニグマ)〉~甦るロシアの巨人 [DVD] 関連情報
リヒテル 幻の東京リサイタル (Sviatoslav Richiter Private Recital at Shou-en in Tokyo 1984)
お茶室・蕉雨園でのNHKライブ録音・・・難しい条件での録音ですが不要な響を排除した澄み切った音楽が流れ出します。ハイドンのPソナタ24番と32番、ドビュッシーの前奏曲集と映像第1集の数曲が入っています。生真面目で正確無比の演奏が素晴らしい構成力で再現されています。私見としては会場の問題も有りましょうが、フランス印象派の音楽の方が聴き易く音の重なりや倍音が聴き取れた感じで、雰囲気が良かったです。 リヒテル 幻の東京リサイタル (Sviatoslav Richiter Private Recital at Shou-en in Tokyo 1984) 関連情報
ピアノの上手い人はたくさんいるのに、なぜ、リヒテルの演奏はこうもすばらしいのか。名演奏家なら必ず弾いてくれるラフマニノフの2番とチャイコフスキーの1番で、どれもすばらしい演奏なのに、この人のは別格。どうして、感動で泣けるのだろうか。やはり歴史に残る名演奏家だとつくづく思います。買って損はしません。 チャイコフスキー&ラフマニノフ:ピアノ協奏曲、他 関連情報
インタビューで、きく相手によってエライ機嫌が変わる人なもんだから、著者はそうとうびくびくだったと、書いているけど、会ったらどうも気に入られたみたいで、ずけずけと言葉を投げかけられる幸せを、感じているみたい。私的精神的な依存関係、いうなら気安い友人への甘えが見える。そういった人間関係になれるのは大人になってからは、まれ。で、リヒテルだけに、ちょっと、うらやましい。公式じゃないほうの地言葉でのコメント風といえばよいか。しかし、こうしてみると、モンサンジョンなんかは、ツッパラレテタンダナァーと思いますよ。よくある、アチラのひとの自己防衛的少年のツッパリ・ハネカエシ世界。なめんなよ、ってこと。まあ、レアネタに走るあまり、録った中から出すべきでないのまで出したってことかもしれないが。しかし、トモダチになれば、それとは別世界が開けるのもまた、アチラの特徴。いや、万国どこでも友には胸襟ひらく。それに、たしかリヒ氏、奥さんとともにどっかで自分の名前を利用された経験があったと言ってましたしね。ともかくペルソナ使い分けとはよく言ったもんで、たしかにこのギャップは、すごいんですよ。モンサンジョンとみどりさんでいえば、一方にはピアノの練習なんか二時間もするもんかバカ、って言っておきながら、片方へは、作品をかみくだいて自分のものにするまで練習200回くりかえすこと、言ってみたり。天と地。でも200回って、何日かかる? 実際、このひとの朝から晩までの練習漬け、なんかについては、身近で見てたミドリさんの方が正確に記してるけど。そんな世話係り・秘書の日本人への対応と、また異なる男の子同士のやりとりが、うかがえるのがこのインタヴューの魅力でしょうか。総括すれば、リヒテル語録としては、まあまあの本です。 リヒテルは語る―人とピアノ、芸術と夢 関連情報
スヴャトスラフ・リヒテル・コンサート/モスクワ音楽院ライヴ1976 [DVD]
リヒテル、61歳(1976年)、モスクワ音楽院大ホールでの演奏録画。しっかりとした姿勢で、打鍵、鋭利に、曲のなかに、聴く者を導く。映像のなかで、コメンテーターが言っているように、正に、作曲家と聴衆との間にある壁を取り払う演奏だ。事実、いずれの曲も、親しみ深く感じられ、これがラベルだったのか、あるいは、エッ、今聴いている曲がベートーヴェンなのか、という思いを持たせられる。さすが、20世紀に君臨した大ピアニストであることを実感する映像である。ただ、ノイズがあるのが、難点であるが、希少な映像であるだけに、その点は、やむを得ないこととしよう。しかし、PCMステレオで聴くよりも、ドルビーディジタル・サラウンドで聴いた方が、ノイズが気にならない。念のために。 スヴャトスラフ・リヒテル・コンサート/モスクワ音楽院ライヴ1976 [DVD] 関連情報