とにかく、ピアノの音色のバリエーションを楽しんでほしい。突き放すようで 纏わりつくような 距離感の定まらない音が心地よい。その音に乗って聴こえてくる詩は溜め込んだ感情で出来た言葉が表面張力のグラスから一気に零れ落ちるかのような勢い。無骨で優しく 柔らかく研ぎ澄まされ 時に問いかけるような彼女のメッセージ頭に少し余白を作って お耳を傾けてみてください。 岸のない河のほとりで 関連情報
やっと見ることができた。あっと驚くような演出や華やかな衣装がなくてもライブは成立する。一瞬の瞬きでさえも許されないような緊張感、ぐいぐい引き込まれて息を呑むことさえもできないような迫力。これほどまでに歌の世界に引き込まれたライブは見たことがない。84分という短い時間が終わったその時、初めてはっと息を吐き現実の世界に戻される。まるで夢を見ていたかのようなそんな感覚。生で聴いたら一体どうなってしまうのだろうか。彼女のライブDVDがこれ一枚だけというのは惜しい限りだ。見ろ!!とは言わない。だけど、見たほうが良い。 ライヴ「ナイルの一滴」 [DVD] 関連情報
レビューを読んで、タイトルをみて、ジャケットをみて、少々構えてしまったが、自分にはまったく抵抗なく?受け入れられる作品であった。 ”これはこれで好き”といったような類ではなく、それは新境地ではあっても、間違いなく彼女でしか表現できない世界である。巷にあふれるラブソングとは一線を画す、翳りのあるアンビバレンツな詞の世界とアップテンポでスピーディなリズムが併行する。 アコースティックなアレンジ自体はさして目新しくもないが、ヴォーカルが違うだけでこれだけ魅力的なものに変わるものなんだ。先入観から二の足を踏んでいるあなた、聴かなきゃ損ですよ・・・ あいのうた 関連情報
当たり前だが、五七五の“短歌”集ではない、短“歌詩”集。最初、読み間違えていました(笑)。矢野さんの詩(歌詞)それぞれから一部が抜粋され、テーマ(?)ごとにまとめて並べられている。個人的には、この“テーマ”が興味深い。なぜ、この曲とこの曲とが1つのジャンルなのだろう、などと考えてしまう。他に「お話」(創作短(掌)篇)、ライヴチラシからの抜粋(?)、ディスコグラフィ、年表を収録。−−−−−−−−でも、ありきたり(同種の試みは既にたくさんある)だけど「全歌詞集」的なもののほうが、良かったんじゃないのかなあ。抜粋版というのは、作り手(エディター)のぎりぎりのセンスが、より問われるわけで。この本は、そういう意味では、ちょっとどうなんでしょうか…。 かなしみと呼ばれる人生の優しさよ―矢野絢子短歌詩集 関連情報
例えば、安易に「愛」が歌われた歌が氾濫している今日の日本のポピュラー音楽シーンにおいて、矢野絢子の「愛してるよ」はとても貴重だ。それが本来、裸の言葉であることに気づかされる。そしてそれゆえに「愛」とはそれ自体が傷つきやすい言葉であることを、「愛してるよ」と切実に、何度も歌い上げる彼女から私は知った。アルバムについての話をしましょう。作品には、シングルとしてリリースされた「てろてろ」「夕闇」のそれぞれのカップリング曲までもが収録されていて、いくばくか首をかしげてしまったのですが、それらがアルバムの―この作品タイトルに準じて―「一滴」としてしっかりと機能していて頷けました。寧ろ、この作品は曲の流れがとても心地好い。「ナイルの一滴」という作品のタイトルをコンセプトとして考えても、或いはアルバムの最後を飾るタイトル曲に向かって。とは言っても、何も同じようなトーンの歌が並べられているわけでは決してない。多彩な音楽性、確かな演奏力、独特な歌詞世界等は彼女が、この商業志向型のメジャーシーンに埋もれることなく、真にミュージシャンであり、且つそれが彼女独自のものであるということを堂々と示している。各楽曲に関してはもはや触れる必要はありません。言葉では言い表し尽くせない気持ちでいっぱいです。勿論、CD上での彼女の楽曲の特色である、ヴァイオリンやアコースティックギター、アコーディオンといった楽器の織り成すアコースティックな楽曲満載です。悲しみと凛々しさ。それは矢野絢子の一つの美学なのかもしれない。実に凛々しく、そしてこれからが頼もしい歌い手が現れたものだ。 ナイルの一滴 関連情報