エッセイを読んで、涙した。父、芥川龍之介が亡くなったのは、著書比呂志が7つのときだった。龍之介が木に登る映像を見た方は多いのではないのであろうか?(某書店が夏のキャンペーンCMに使っていたこともあった)おそらくあの木に、比呂志が父と上る話がある。しばらくして幼い息子たちを残して死んでしまうが、そこには自愛に満ち溢れた父親、龍之介の姿が暖かく描かれている。 ハムレット役者 芥川比呂志エッセイ選 (講談社文芸文庫) 関連情報
著者はあとがきで「僕ら四人より遅れて青春を過ごした人たちに、僕たちの青春を知ってもらいたい。」というのが執筆動機と書いていますが、果たして今後、読む人がいるのか、読んだとしても理解出来るのか、そもそも登場人物とその周辺の事柄がなんのことやら解らないのでは?と察せられます。 せいぜい、知ったとしても三島由紀夫ぐらいまでではないでしょうか? 芥川比呂志さん、特に加藤道夫さんのことなどは、おそらく誰なのかも知ることは無いでしょう。その上でこれからの読者がこの書物を読んでも、ましてや演劇界のことなどはその時代をも含めて大昔前のこととしか思えないでしょう。(第一、今の時代でも著者・矢代誠一氏のことも知らず、その書物も読む人はいないのでは?) 著者自身を含めた四人の書物・書簡等からの引用、その他の関係者の書いた物からの引用をも上手く散りばめ、著者が情熱を込め懸命に書いているその記述は正確であり、かつ観察と描写も思い切ったものがあり、確かに読ませる作物です。もっとも演劇・戯曲の世界に関しては、どうしても著者の思い込みと専門性が出てしまい、ともすると一般の読者には戸惑いが生じます。もう少し簡明に一般的な言葉で説明・記述が出来なかったものかと、その点が惜しまれます。 旗手たちの青春―あの頃の加藤道夫・三島由紀夫・芥川比呂志 関連情報
往年の役者陣の出演を始め、実話に近いストーリーで、観応えがありました。 夜の蝶 [DVD] 関連情報
1966年録音のこの作品は、私が自分の意志で聴いたはじめてのレコード(当時は当然LP)だったと思う。3、4歳だった私は、父親の書斎にあるステレオの電源を勝手に入れて、このレコードを繰り返し繰り返しかけていたらしい。 今、このCDを聴くと、懐かしさに加え、当時には知る由もなかった素晴らしさに、あらためて驚かされる。 トラック1『いろいろながっき』では、芥川比呂志さんの、一生懸命子供向けに語りかけているけれどどうしても渋さが拭いきれないナレーション(笑)で、オーケストラで使われる楽器の音色を、フルートからコントラバスまでひとつひとつ紹介している。今思うと、この楽器紹介の順番はフルスコア(総譜)の順序に従っていたのだ。しかも、金管楽器のセクションでは、さまざまなミュートの音色も(トランペットに至ってはマウスピースだけで吹いたときの音色までも!)紹介されている。しかし、ナレーションの助けを借りているのはこのトラック1のみである。トラック2から最後まで、約48分に渡り堂々たる交響叙事詩が繰り広げられるのだ!ところどころに効果音が使用されているものの、一切のナレーションを含まず、オーケストラの演奏だけで、あの伝説の白いライオンの物語が語られる。ワーグナーが確立したライト・モティーフの手法によって、さまざまな楽器が、たくさんの動物たちと広大なジャングルの風景を鮮やかに描き上げる。天才、冨田勲!!巧みなエフェクト使用による遠近感の変化の付け方やパニングなど、プロフェッショナルな視点からこの作品の素晴らしさを語りだすと本当にきりがない。少なくとも、「子供向け」に作られたものの中で、これほどまでにクォリティの高い作品が、今、存在するだろうか??子供たちはもちろん、オーケストラにちょっと興味がある全ての大人たちにも、この作品は超オススメです。 交響詩 ジャングル大帝 関連情報