visual experiments lain/ビジュアルエクスペリメンツ レイン
商品が届いた時はかなり厚みのある本を想像していたので「薄っ!」と思いましたが、内容がとても濃いです。1話(2Pずつ)→間→2話→間→3話→間・・・という感じで進んでいくのですが、間のページひとつにもセンスとこだわりを感じます。ヴィジュアルで読み進める本なので内容が薄いのではないかと心配でしたが、作中で気になっていた玲音の心情、キャラクター設定や特徴、機械やNAVIの詳細など気になっていた「ココ」という部分もコラムと共にしっかり掲載されています。また後半には玲音の声を担当された清水香里さんやOP・EDを担当された方へのインタビュー、CD情報など痒いところに手が行き届いてかなり親切な本だと思いました。キャラの台詞や細かな心理・情景描写を一緒に読んでいくシナリオとは違い、知りたかった詳細をイラストと共に読み進める事ができる、また知りたかった所だけ読む事も出来るのでとても読みやすいです。シナリオとヴィジュアル両方持っていない方は、先にヴィジュアルを読んでからシナリオを読み進めたほうがより楽しめると思います。lainファン必携のとても良い本でした。 visual experiments lain/ビジュアルエクスペリメンツ レイン 関連情報
タイトルが示す「夕闇」とは、文字通り現実と怪異が重なり合う「逢魔が刻」を示すと同時に、思春期の主人公たちがいる「大人と子供の境界」を象徴している。これは思春期の子供たちが、心霊現象や都市伝説を究明する過程において人間関係や現実世界との折り合いを学び、精神的に自立して行く成長の物語であり、ゲームのテーマに対応した実に秀逸なタイトルと言える。主人公である中学生3人の立ち位置も絶妙で、超常現象や霊といったものに否定的な現実主義者のサンゴ、古代信仰や霊的世界を体現するクルミ、そのどちらにも付けないナオ。彼らの対立と調和、成長と停滞は、そのまま自然を切り拓き発展してきた陽見市と、その陰で忘れられ停滞してきた土着の神々の関係ともシンクロしている。はっきり言って操作性の悪さや、学校での噂の入手タイミングの難しさ、ベストエンドに行くための条件など、難度は激高。何をするにも時間制限や選択肢による正否を求められるので、独力でのベストエンドクリアはまず不可能に近いと思われる。攻略サイトなどを参考にいくつもの噂を効率的に同時攻略しなければベストエンドには到達できないだろう。しかしそれらを補って余りある、怪異の集まる陽見市という街の実在感と、そんな夕闇迫る街並みを駆け抜ける少年少女たちの青春前夜の冒険譚は、かつて少年だった「いつかの自分」の姿とも重なり、胸に迫るものがある。何処にでもありそうで何処にもない、それぞれプレイする人の郷愁の中にだけ存在する街がここにある。 夕闇通り探検隊 関連情報
Serial Experiments Lain: Ultimate Fan Guide (Ultimate Fan Guide Collection)
あまり期待してませんでした。なのに、けっこう濃い内容で、英文もわかりやすい方でした。なにより、本編から使用されている図版の多さは、ファンとしてはうれしかったです。 Serial Experiments Lain: Ultimate Fan Guide (Ultimate Fan Guide Collection) 関連情報
そもそもこの作品をゲームと呼んでよいのか疑問なのだが作品としての出来は比類ない稀有な媒体。アニメ版とは全く違ったアプローチと表現方法で。でレインという少女の本質に迫った衝撃作。初回出荷分がそもそも非常に少ないので手に入れた人は非常に幸運です。私は運良く手に入れてプレイしましたが正直侮ってたので初プレイ後、脱帽しました。このROMの中に入っている色々なシーン、それは断片的な映像だったり音声だったりします。それをプレイヤー自身が紡いで結んでいき自分の物語と話の終末を考える。とにかく深い、深すぎる作品です。知り合いの精神科の医者に貸してプレイさせたら一ヶ月戻ってきませんでした(笑)〔←何気に実話「非常によく研究してるよ。このゲーム。ちょっと侮っていたよ。」と語った彼の顔からは笑みが消えていた。つまりそれほどの凄まじいクオリティーに満ちた作品だという事です。精神心理学、哲学、医学、超心理学など作風が完全に人間の内的世界に向いている。そっち方面が嫌いな方は決してプレイしないように。好きな方はもう極限までやりこむでしょうな。そういう作品。本作の本質:「虚構と現実の狭間とは何か?」「ハッキリした境界線があるのか」「人間にそれを厳密に定義できるのか?」かなり深い問題提起を含んだ作品です。lainファン、その他の内的世界が好きな方は見つけたらレアなので即勝手プレイして下さい。文句無し★五つ。 serial experiments lain 関連情報
Drawing on Tradition: Manga, Anime, and Religion in Contemporary Japan
本書との出会いは奇妙だった。『脳の右側で描け』の原本をアマゾンで検索した時、“Drawing on”にマッチして現れた。題名とカバーデザインに興味をひかれ購入した。(その時はなか見!検索がついてなかったように思う)本書は一般書ではない。宗教学の研究書である。研究書なので、本文とは離れたところに注釈、文献があり、一つひとつの文章が長く、英語であるので読みにくい。ただ研究テーマが、「現代日本でのマンガ、アニメと宗教の関わり」で親近感があり、著者も日本語(ローマ字だが)をできるだけ取り込もうと努力しているので、なんとか読める。多くのマンガを扱っているが、漫画やアニメを見る習慣がないので、ほとんど知らず、第3章は全編が宮崎アニメに関することなので、ここを主に参考にさせてもらった。この章の節目次は次のとおり。()は評者が記す。Miyazaki's Moving Pictures/Framing Miyazaki as Religious/Watching Films Religiously/JAI SANTOSHI MAA/"Playing with Religion"/Animated Audiences/NAUSICAA OF THE VALLEY OF THE WIND(ナウシカ)/MY NEIGHBOR TOTORO(トトロ)/PRINCESS MONONOKE(もののけ姫)/SPIRITED AWAY(千と千尋の神隠し)/MIYAZAKI'S WORLD/Beyond Borders/Drawing on Miyazaki in the Classroom/Segueこの影響で、宮崎アニメをナウシカからポニョまでのほぼ全てをDVDで見直し、一部のものは絵コンテ(ビデオと本)で、さらに詳細に鑑賞することになった。これらは大人が、子供とは関わりなく、正面から見るべき、内容の豊富な作品群であり、すでに古典の域にあると考えるに至った。同時代の古典という稀有な存在に気づかせてくれたことに感謝したい。 Drawing on Tradition: Manga, Anime, and Religion in Contemporary Japan 関連情報