この仕業人に限ったことではないのですが、後半になるにつれ若干のトーンダウンが否めないです。とはいえ、シリーズ放送200回を記念して必殺シリーズにゆかりの俳優がちょい役で出演の話など、見どころも十分で決して駄作続きというわけではありません。そして迎える最終回。仲間の敵を討つべく初めて果たし合いをする中村主水。果たし合いはシリーズ中これが‾‾最初で最後。殺し屋稼業に疲れ果てた主水は本当は果たし合いで死にたかったのでは?生き残ってしまった彼には再び殺し屋として無様に生き続けるしかない。主水ものの最終回中最も無情でありながら、このまま退場(シリーズ降板)しても十分納得のいったであろう最終回。ぜひ御覧下さい。 必殺仕業人(下巻) [DVD] 関連情報
内田樹氏は修行に関して持論を展開していますが、本書は元ラグビー選手の平尾剛氏との対談を収録。昔ラグビーをやっていた私としては、そこに惹かれて購入しました。武道(合気道)とラグビー。どこに接点があるのかな?というのが大きな興味でした。平尾(元)選手は、同志社大学時代に注目されていた選手だった記憶があります。神戸製鋼に進んだあとは、私もラグビーをそんなに見ることもなくなり、その後の活躍を知りませんでしたが、最終的には昔やった脳震盪の後遺症のため引退したとのこと。そんなトップアスリートの平尾(元)選手が一線を退き、指導者側に回った時に「運動嫌い」の子供たちがいっぱいいる現実に直面。一方で、「身体の弱い」「運動ができない」子供時代を過ごしたのち合気道と出会い、身体の潜在的な力を100%発揮させようとしてきた内田氏。面白いのは、このように全く逆(?)の運動能力の二人が、今同じ問題意識でいること。現在の子供たちの運動能力の評価が、数値目標の中でなされていることへの違和感ということでしょうか?言語化されていない、数値化されていない中に、身体の本質的な動きがあり、それを発掘するように運動能力を開発すべきである、というのが二人の認識です。非常に面白い考えだと思うし、ラグビーをやってきた私にとっては新鮮な考え方。ただ、二人も対談の中でも言っているように、どうしてもエビデンスがない話が多い。それが、運動経験者には違和感を感じるかもしれません。しかしながら一方で、その違和感を感じること自体が、数値目標の中で運動能力を高めようとしてきた証なのでしょうね。こういったわけで、実感としてすんなり理解できているわけではないのが実際のところ。しかしながら、私もラグビーを子供たちに教えるお手伝いをしているので、二人が主張されている運動能力の開発の方向も念頭においておきたいなと思います。そうでないと、同じことを繰り返すだけですからね。平易な言葉で会話されていますが、なかなか難しい内容の一冊でした。それだけに刺激的でしたけど。スポーツ指導をされている方は、肯定するにしても否定するにしても、一読をお薦めします。 ぼくらの身体修行論 (朝日文庫) 関連情報
バガボンドの吉岡伝七郎の章は、考えるものがありました。突き抜けるためには情を捨てる。つまり孤独になることが必ず求められる。もし私が彼の親ならば、「愛嬌」や「常識」を持ちながら、誰よりも強くあってほしいと願うものです。しかし「愛嬌」や「常識」は、強くなるための突破を阻みます。周囲からすれば、伝七郎レベルの能力者なら、十分あらゆることに活躍できると考えますが「常識を超えた」剣士たちを間近で見ており、かつ前向きな向上心と真面目さを持つ彼には、それは許されないのでしょう。それは人格的な成長であり、別れでもあります。大変歯痒いものなのですが、そこからの選択は子どものものであり、親は見守るしかできません。むしろ一番驚くのは、周囲でしょう。「孤独であれ、強くあれ、人とは思いやりを持ち仲良くあれ」多くの大人達はそれらの言葉を、あくまでも学校、地域、社会人において共通する知識、技能、態度を身につけることを「常識」として、子どもたちに言います。成長のための孤独と突破は、そんな大人の「常識」の範囲内においてです。持論ですが、成長は別れと出会いである、と思っています。清十郎にしろ武蔵にしろ、人にワザと傍若無人を振る舞うのではなく、生き方が変わったなりに、いろんな人と付き合えています。武蔵にいたっては伴侶とも養子とも別れる選択をとりましたが、それも純粋な戦人として生きることを自らに誓ったからです。どの道をとり、その為に何が必要か、どの範囲までやるのか。自分の言葉がどういう意味を持つのか考えながら、自分ごととして、考える切っ掛けとなりました。 近くて遠いこの身体 関連情報
合気道とラグビーを貫くもの 次世代の身体論 (朝日新書 64)
今ラグビー界は、無敵のワセダを作り上げた清宮監督流の、詳細なデータ分析に基づいた作戦と、ウェイトトレーニングによる身体能力の向上により、敵を「クラッシュする」という作戦が大流行である。しかし、それはラグビーにおけるプレーの「創造性」を否定することではないのか。この本では、ラグビーを武道の視点から捉えなおすことにより、「不自然な体の動きで筋肉を鍛えるトレーニングは無意味、気持ちの良い身体運用を身に着けて、身体能力を向上させることが大事」「プレーの中では、状況を見て判断してから動くのでは遅い、とにかく身体が自然に動かなくてはいけない、相手を自分の思うがままに操れるようになるのがベスト」「時間・身体を細かく割れるようになることが肝心」という、現在のデータ分析とウェイトトレーニングを真っ向から否定する議論を展開している。対談者の平尾剛選手が、立派な指導者となり、こうしたテーゼを実現して、日本のラグビーを強くしてくれることを強く期待する。 合気道とラグビーを貫くもの 次世代の身体論 (朝日新書 64) 関連情報