邂逅の森 (文春文庫)
最近の芥川、直木賞受賞作、全部読んでいるわけではないけど、ちょっと違うなと感じていましたが、この作品は良かった。ひさびさに傑作の予感が。読んだことのない作家の長編はとっつきにくいものだけど、この作品はそうではなかった。東北のマタギ(猟師)の世界を描いて冒頭からぐいぐいと読者をひきつける。マタギというハードな男の世界と、主人公富治の恋愛、波乱万丈の人生が綾織のように展開される。方言と山のマタギ用語が飛び交う大正初期の東北の貧しい村が舞台でありながら古臭さを感じさせないのは語り口(文体)が新鮮なせいか。文学的に深い作品が読みたい、マタギという未知の世界への興味、エンターテインメントとしての筋のおもしろさ、人生とは、生きる意味とは、と 欲張りな読者の欲求をすべて満たしてくれる作品。富治が魅力的な男として描かれているのだが、最終章、山のヌシとの一対一の対決はハードボイルドそのもの。しびれます。
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動物地球遺産 ~絶滅危惧種・珍獣たちのビジュアル博物館~
全国学校図書館協議会選定コンピュータソフトウェアです。美しく貴重な写真とイラストが多数収録されています。解説も充実しています。壁紙・スクリーンセーバー付き。
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相棒-劇場版-オリジナルサウンドトラック
全体的に同じような曲調が続くので交響曲を最初から最後まできいているような感じになります。でもメロディにはひきつけられるものがあるのでオススメします。「父」のラスト2分の盛り上がりから「dialog S-133」の右京さんのセリフにつなげているところが秀逸だと思いました。
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森に生きる人―アフリカ熱帯雨林とピグミー (自然とともに)
私は狩猟採集民に関する本を数冊読みましたが、この本は、それらの本で得た知識を再確認しながら、生活の全体像を知るために役立ちました。本書は子ども向けの入門的な本であるため、通常は本書を読んでから、もっと専門的な本に移ることになると思われます。本書がピグミーに関する最初の本であった場合、子どもが本書を読んでピグミーの暮らしにどこまで魅了されるのかという問題はあります。その意味では、コリン・M・ターンブルの『森の猟人ピグミー』のほうが優れていると思われます。ただし、子ども向けではありません。一方、本書には、ピグミーの狩猟と採集の生活、一年を通じた食べ物の変化、家族と集団のあり方など、生活のおおまかな全体像を知ることができるという利点があります。本書を通じてピグミーの生活を知ることは、『ピダハン―「言語本能」を超える文化と世界観』と同様、新しい視点から人類の歴史を見直すために多いに役立つと思われます。
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調律師 (文春文庫)
私と同年代の作家で多くの著書があることを知った。いつもの図書館の返却された本のコーナーに並んでおり、「調律師」のタイトルに惹かれて借りることにした。作品は「オール読み物」に連載されていたもののようだ。7つの章で構成されており、一話ずつ切れのよいところで終わっている。主人公は、調律師という、私にはなじみのない職業についている。過去はプロもピアニストであったが、ある事故をきっかけに妻の職業であった調律師になった。章ごとに一つのピアノの調律を行うのだが、そこには彼独特の方法がある。彼は音を嗅覚で感じることができる。かっては、音が色となって見えていたのだが事故により色が見えなくなってしまった。嗅覚で行う調律は、依頼者の希望を満足させるものとなる。章も中盤を超えたあたりで、東日本大震災を経験することになる。宮城県気仙沼出身の彼としては、いままでの連載を書くことができなくなり、話は仙台にコンサートで使うグランドピアノの調律の最中に大地震が起きる展開へと変わって行く。最後は、きれいにまとまっていると思う。音楽の才能が皆無の私としては、ピアノが流暢に弾けるだけでとてもうらやましい。小説を通して音楽に触れることができ、よかったと思う。肩肘張らず、気楽に読める一冊だ。他の作品も読んでみたい。
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