アキ・カウリスマキ監督、フィンランド映画。ともに失業した夫婦が立ち直るまでを描いた物語。演出も画面構成もストイック。だが結構最後まではらはらさせられる。不況による失業や銀行の貸渋りがでてきたりと日本と同じ状況があってなんだか他人事ではない。殆ど笑わない妻が引っ切りなしに吸うタバコは禁煙ばかりが叫ばれる軟弱な現代社会に反抗しているようで痛快。最後のシーンでもタバコを吹かしながら空を眺める姿がバッチリ決まる。不況が気になる中年世代は共感できる映画だと思う。 浮き雲【字幕版】 [VHS] 関連情報
若いときはとかくごちゃごちゃと考えててもしょうがないことを考えるもので、それは男女ともにそうなのかもしれない。物事をわざと複雑に考えて複雑に考えられる自分によっているところがある気がする。なんにも感じなくなった中年よりはいいのかも。 浮雲 関連情報
先般、青土社「ユリイカ」で高峰秀子の特集が出ました。高峰秀子が亡くなって数年経ちますが、彼女への賛美は重低音の趣ですが惜しみやみません。彼女のエッセイは、未だにほとんどが手に入り、装丁を変えた新編集本が出ている事実を鑑みるに、高峰秀子の映像作品はこのビデオ氾濫の時代になかなか手に入らない。これはどういうこと?木下惠介作品は、松竹さんの木下惠介生誕100年を記念して、まだ手に入れる機会があるものの、成瀬巳喜男作品となると絶版ばかり。これは東宝さんの怠慢でしょう。この「浮雲」jのような名作が、気軽に手に入れられない状況が、悲しい。作品評価は言わずもがななので、ここでするものではないですが、もう少し、成瀬作品も大事にしてください。「乱れる」「女が会談を上るとき」「あらくれ」等々、東宝映画の財産ではないですか。成瀬作品の高峰秀子を、もっと気軽に観たい。でも、作品評価は星5つなので、東宝さんの猛省を促しながら、やはり星5つ。 浮雲 【東宝DVDシネマファンクラブ】 関連情報
<元気コメント> 夫婦共に職を失い、さらに住むところも危ういながら、結局努力と工夫でなんとか道を切り開いていく姿は、じわじわと元気をもらえます。 浮き雲【字幕版】 [VHS] 関連情報
切なさと温かさとほんのりしたユーモアを、まるでサイレント映画のように映像で表現するところに我々がアキ・カウリスマキに夢中になるのだとすると、このカップリングは正に最高の2本立て。この最高の監督の映画をまずはどれから見てみようと思っている方には、私はこのソフトをお勧めします。この後の“過去のない男”以降の作品の方が、無愛想な作風で無表情な登場人物が出てくるだけなのに妙に心にひっかかるカウリスマキ節が完成されているような気はしますが、それでもこの中期の2本には特に癖になる不思議な魅力を感じます。珈琲をがぶ飲みする男とウォッカをがぶ飲みする男の恋の珍道中ロードムービーと、不幸のてんこ盛りなんだけれども気が合う伴侶と2人でちょっと幸せそうにも見える夫婦の話。この2本の魅力は言葉ではとても表せません。ちょっとオフビートですが、気難しい映画ではなく最高に素敵な娯楽映画です。 愛しのタチアナ/浮き雲 【HDニューマスター版】(DVD) 関連情報