リストに興味あって、伝記などを一冊も持っていない方に、この本をお薦めします。おろそかにされがちな宗教的な面などについても書かれており、バランスのいい評伝です。最新の研究成果も含まれているので、既にアラン・ウォーカーの3冊をお持ちの方にも、それを訂正する意味で強くお薦めします。何より有り難いのが、新しいLWナンバーというリストの作品番号を採用していること。そのためにサールの番号を完全無視しているのはいただけませんが、リストのほぼ全ての作品が載った巻末の作品表は、非常に便利です。ただ、曲名の訳が一部ヘンなのがありましたので、星をひとつ減らしておきました。ウェブ上のホームページにもそれなりの情報はありますが、専門家が書いたこういう本を読むと、彼らがいかに豊富で新しい情報を持っているかが分かります。正確なリスト像のために、ネットサーフィンよりもこの一冊です。 リスト (作曲家・人と作品シリーズ) 関連情報
タイトルから予想した以上の傑作であった。恐らく、編集者が、売れ筋を目指して付けたタイトルかと想像されるが、実際の内容は、もっと幅広く、深い。前半は、神童としてのリスト。また、元祖アイドルともいうべきモテ男のリストが描かれる。当時のサロンの雰囲気や、ピアノという楽器の発展の模様など、時代背景を巧みに絡ませながら、リストの人生が、生き生きと描かれていく。最初から最後まで、ぐいぐいと読ませる文章力の高さも、この著書の魅力である。特に、私が引き込まれていったのは、むしろ後半の部分である。同時代に生きた、一方の天才であるショパンや、ワーグナーとの関係を、史実や書簡などを交えつつ浮き彫りにしていく。さらに、数知れぬ弟子を持ちながら、年間2000通もの手紙を書いていたエピソードなども伝えられる。リストが、ピアノの天才のみに止まらず、底知れぬエネルギーに満ちた偉大な人物であったことが、明らかになっていく。もう一方では、ヨーロッパ中を渡り歩いて来たリストが、祖国というべき国を持たず、多くの無理解に苦しんだことが綴られた手紙なども紹介されている。ノルウェーの作曲家・グリーグが語ったリストとの出会いの言葉が、リストの偉大さをよく表現している。「わたしは、彼に会って、ピアニストとしての彼の比類なき独創性を知り学んだだけでなく、それ以上に、芸術の域を超えたところの精神の偉大さを、目の当たりにした」ご多分に漏れず、ショパンが大好きで、リストをよく知らなかった私だが、この書を通して、一気にリストという人物が大好きになった。 フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか(新潮新書) 関連情報
この盤、ミーハーになって買いました。村上春樹「色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年」で大評判のラザール・ベルマン。しかし、以前から聞きなれていたクラウディオ・アラウの方が淋しくなくてよいように思いましたが・・・。 リスト:巡礼の年(全曲) 関連情報
フランツ・リスト:生涯と音楽 (Liszt: His Life & Music)
coの1はパーフェクト。だがcd2はタイトルその他が、入らない。 フランツ・リスト:生涯と音楽 (Liszt: His Life & Music) 関連情報
フランツ・リスト(1811年10/22〜1886年7/31)は、過去から現在に至るすべてのピアニストを凌駕し、その頂点に君臨する史上最高のピアニスト。 父親の手引きで幼年時代から音楽に才能を発揮し、1827年父のアダムの死後は、わずか15歳でピアノ教師などをして家計を支えました。 とにかく、全盛時代はハンサム、しかも話術も巧みでとにかくモテたそうです。 ピアノに関しては、圧倒的な超絶技巧で、ピアノの魔術師と称され、どんな曲でも初見で弾きこなせるという素晴らしい暗記力、 加えて、夢見るような甘美な旋律、コンサートでは失神者が続出したといわれています・・コンサートという演奏会形式を創始したのはフランツ・リストだといわれています・・・・ そして、数々のスキャンダル、カロリーヌ・ドゥ・サン=クリック伯爵令嬢との恋愛破綻事件、 マリー・ダク―伯爵夫人との駆け落ち、そして、3人の子供を産ませた事件(そのうちの1人は弟子のハンス・フォン・ビューローのもとを去り、 リヒャルト・ワーグナーのもとに走ったコジマ)・・・ 晩年は、宗教活動に帰依し、多くの弟子を養成し、最後は、ワーグナーのためにバイロイトへ赴き、そこで帰らぬ人となります。 考えてみれば、リストが亡くなったのは、わが国では明治の中ごろ、 同時期のライバル(お互いは友人だと思っていたようです)ショパンがわが国では圧倒的に人気が高く、また、数多くの曲が知られていますが、 一方、リストは人気があるとはいえず、一般的に知られている曲も、愛の夢第3番、ラ・カンパネラ、ハンガリア狂詩曲、2、3 の交響詩 くらいです(私が所有しているソフトもその程度です)・・・ただし、最近は、村上春樹さんの「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」 でリストのCDがベスト・セラーになったようです・・・ わが国でリストに関する書物で現在、書店で購入できるのはわずか1冊だそうで、ショパンと比較するとさびしい限りです。 著者の浦久さんは、こんなにも高名で功績のあるリストが、なぜここまで語られないのか、なぜ、理解されないのか? その理由は何なのか?それが不思議で本書を書き始めたそうです。 リストの生涯と、その時代背景はよくわかりましたが、本書を読んでも、わが国でリストの人気がない理由はよくわかりません。 もう一度リストの曲をよく聴きこんで、その理由を探りたいと思います。 フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか (新潮新書) 関連情報