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ロード・トレイシー タバコ・ロード [DVD]

 「タバコロード」は、1932年にアースキン・コールドウェルが発表した小説であり、これをジャック・カークランドの脚色により戯曲化されている。翌1933年12月4日にはニューヨークで初公演され、以降、米国演劇史上、長期公演のあらゆる記録を塗り替えている。 「怒りの葡萄」や「我が谷は緑なりき」等で知られる社会派のジョン・フォード監督により1941年に映画化され、1930年代の大不況のジョージア州を舞台に、不毛の土地で極限状態まで追い詰められた農民一家を描いている。 映画冒頭のポンコツ自動車が登場するシーンは、さながら戦後のホームドラマ「じゃじゃ馬億万長者」を連想させてしまう。 全編通じて、フォードの高級車が出てくるが、チャールズ・チャップリンの映画と同様、これは富裕者層の象徴として描かれている。 「衣食足って礼節を知る」という諺があるとおり、登場する農民は、教育を受けられずに文字も書けない状態で、代々、極貧生活の負の連鎖から逃れられない人生を送っている。彼らの唯一の規範は盲目的な深い信仰であり心の支えとなっているが、貧困のため、往々にしてこれは破られている。 映画中では、冒頭から聖歌や讃美歌の「古き良き信仰」や「まもなく彼方の」が歌われ、また、登記所では讃美歌322番の「蒔けや種を朝早く」を、自動車販売店では聖歌645番「父の神が我ら」が歌われ問題は解決されている。すべてが信仰から成り立っているのである。 フォード監督は「怒りの葡萄」、「我が谷は緑なりき」のように、直接、怒りを画面にぶつけることはなく、本能のままに想像を絶する行動を取る農民一家の暮らしを辛辣な人間観察をふまえ、農民の怒りと悲しみをヒューマニズムとユーモアを交えて温かく描いている。 映画のラストで、救貧農場に向かう途中、最後の最後で小さな奇跡が起きる。その奇跡は善良な一アメリカ人による良心であったのだ。神はいたのだ。 ジータ役のチャーリー・グレープウィン、妻エイダ役のエリザベス・パターソンの陰影の濃い喜怒哀楽表現の素晴らしさ。薄汚く汚れた薄幸の娘エリー・メイ役のジーン・ティアニーの魅力的な演技に惹かれる。 そして、全編を通じて、撮影担当のアーサー・C・ミラーのパンフォーカスなカメラ・ワークが光り輝き、救貧農場に向かう車中での主人公の瞼に滲む涙の描写の素晴らしさに震撼を覚えるほどである。 貧しい白人のアメリカ人を描いた、この映画はアメリカの恥として1988年まで日本に配給されることはなかった。 ユネスコ統計年鑑をグローバルな視点で見る限り、未だに識字率は発展途上にあり、大多数の人々が貧困に苦しんでいる現状にある。 タバコ・ロード [DVD] 関連情報




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