突如飛来した巨大兵器により王室が崩壊した大英帝国。
異星人と思しき敵の超兵器とその手下、『人間モドキ』を自在に操る術を身に付けた青年実業家、ヘンリー・グレイブにより、新しい体制が出来つつあった…。
2巻より登場した、野望に燃える青年グレイブと彼に憧れつつも自分の道を切り開こうとする主人公オリバーと貴族の娘マリアを描き、レトロなSF活劇であるのと同時に少年のビルティングス・ロマンでもあり、身分の異なる少年少女のボーイ・ミーツ・ガール物でもある本作。
特にこの巻は人口に膾炙したH.G.ウェルズの原作を小原氏流に大胆にアレンジした筋運びが見物です。
グレイブが単なる目端の効く若者ではなく、革命家的様相を帯びて来たのが意外でした。
そして異星人とその下僕人間モドキ達に生じた異変とは?
後半以降は
サーカスから逃げ出して来たインド系美少女が登場し、やや過渡期的なエピソードですが、大きく原作から離れ、今後の展開が実に気に掛かります。
月刊!スピリッツ 13年9月号から14年2月号分を掲載。
描き下ろし番外編ショートコミックがオマケ収録されています。
19世紀末の
ロンドン、阿漕な孤児収容施設の院長にこき使われながら、生来の機転を見せる「オリバー」。
売り上げの着服を仲間の嫉妬心から院長に知られ、仕置・監禁を受ける。
彼を慕う年少の「ぼうや」の手で脱出すると表では巨大な三脚の機械が街を破壊し、人を捕獲していた…。
「月刊!スピリッツ」連載。
人口に膾炙した19世紀の2大文学を絶妙にブレンドしながら、主人公の孤児オリバーが逃避行中にであった貴族階級の娘、「
アリス」とのボーイ・ミーツ・ガール物も加え、人間の醜さと共に崇高さも描いた素晴らしい導入部を見せてくれます。
ユーモアよりハードな描写が多くなっていますが、聡明で凛とした少年少女達を描く小原氏のエヴァー・グリーンな筆致も健在。
正体不明の侵略者、謎の多い「ぼうや」等の伏線と共に業腹ながら印象的なキャラ、院長もフェイドアウトせずに「漂流教室」の関谷や「宇宙家族ロビンソン」のDr.スミスの様な活躍を今後も見せてくれるのでしょうか。
まだまだ面白くなりそうです。
少年少女を主役としたレトロ風SF冒険物がお好きな方には文句無しにお薦め致します。