「禁じられた遊び」は独特のメロディに、耽美で魅惑的な歌詞が、耳に残ります。
嬢様方の狂おしい程の執着と、高貴な自尊心が混じり合う背徳の世界、そんな印象を受けます。
「あたしが
アリスだった頃」この曲が大好きです。
この世界の全ての汚いモノに浸り、ふと気が付くと抜け出せなくなった「あたし」が、綺麗なあの世界を懐かしく恋しく思う…。自然に涙が出てくる曲です。
ごく最近の日本人から観たという感想ですが、火垂るの墓のニュアンスを持ちました。直接戦闘シーンというのは描かれませんが、戦時中の農村部の暮らしとまた直接戦争を知らないが否が応でも巻き込まれる側の少女と少年を描いている点があるので。当たり前ですが、他人の子供を受け入れるというのにいい顔しないというのも雰囲気として近いものを感じました。
それでも当時の映像技術か、意図的か、
フランス映画の雰囲気かは判別出来ませんが、落ち着いているというのが全体的に見渡した時通底しています。
勿論、親の死、墓荒らしといった忌みはあるのですが、グロテスクな表現は皆無です。そういった意味で淡々と最後まで戦時中の空気というものを描いていると思います。
またこの映画独特のものとしては、やはりボレットとミシェルの恋愛でしょう。勿論一方が死も理解出来ない少女で劣情を抱くわけではありませんが、少年ミシェルの必死の思いというのは伝わります。それ以外は当時としてはまだまだ重要だった信仰もどこか欠落しているのでだいぶ問題児であることは変わりありませんが、常にその行動には少女ボレットへの愛が裏打ちされています。禁じられた遊びというのもおおよそですが、ここの愛する余り墓荒らしをしてしまうというのが
タイトルに相当するところです。
そして最後二人の遊びは強制的に打ち切られ、ボレットは戦災孤児の一人として駅を彷徨いそこで終わりますが、物語の中で何度も繰り返した「ミシェル」というのが最後まであるので脳裏に焼き付きますね。しかもボレット役のブリジッド・フォッセー当時わずか5歳にして自然体の動きをするので、音声もそのまま。
わずか500円ですが、いつまでも残しておきたいものに出来るというので買いです。
1940年6月、南仏の田舎。ナチの爆撃機の機銃掃射で両親を失い、彷徨い歩く5歳の少女ポーレットは、農家の少年ミシェルと出会い、彼の家に連れていってもらう。ポーレットが抱いていた死んだ子
犬の墓を作るミシェルから、死んだものを葬る事を教わったポーレット。十字架を立てて死んだものを葬ることを覚えたポーレットは、ミシェルと一緒に死んだ動物たちのお墓を作って遊ぶようになる。・・・
戦闘を描いているのは、最初の機銃掃射の場面くらい。あとは牧歌的な南仏の田舎の風景が広がり、その中で無邪気に遊ぶポーレットとミシェルがいます。ゴキブリやモグラ、ヒヨコなど自分の身近で死んだ動物を葬るために、やがてミシェルは墓場から十字架を盗んでくるようになります。2人の何気ない遊びが大人に知れてしまったとき、大人は目くじらを立てて怒るのに、一方でミシェルの家族は、隣人といがみ合い、ついには墓穴でとっくみ合いの喧嘩までしてしまう。子供の無垢な視点から浮き彫りにされる大人達のエゴ、そのために戦争も起こってしまったんだと思うと何だかやりきれなくなりました。
ポーレットとミシェルを演じた2人の子役の演技は、実に見事です。ナルシソ・イエペスの物悲しいアコースティックギターの音色も、この映画にマッチしていて一層気分をかきたてられます。戦闘の場面は少ないけれど、この映画は戦争の愚かしさを訴える、見事な反戦映画だと思います。