先ず、竹中氏の豊富な人脈を物語る豪華なミュージシャン(高橋幸宏氏、岸利至氏 、細野晴臣氏、大森はじめ氏、青木達之氏,Nargo氏)と俳優陣(
真田広之氏、布施絵里(現・ふせえり)氏)とオーケストラや少年少女合唱団の参加に驚かされます。
収録曲は権藤知彦氏によるNHK大河ドラマ「秀吉」のテーマ、森雪之丞氏と玉置浩二氏の「くれない東京」大貫妙子氏の「ふたりの星をさがそう」、宮沢和史氏の「国分寺1976」以外は竹中氏と岸氏、高橋氏の作となっています。
竹中氏は主に歌と台詞、作詞を担当、音楽面では岸氏が作曲・編曲・演奏で大活躍。
CD全体を家族の振りをした別人と暮らしているかの如きキッチュな不気味さが覆っており、特に前作のヘビ遣いの音楽にヴォーカルを載せた様な「ドクトクくん」の「不気味ポップス」路線を踏襲した「ヘルレイザー(低音三兄弟)」は、竹中氏に加えて前述の細野晴臣氏と青木達之氏がダンサンブルなシンセサウンドを背景に「うごげぼ。」などと唸っている様子が気色悪くも可笑しく、聴く価値が有ります。
間奏時にバックで披露される小芝居はホラー映画ファンには堪りません。
できれば、世界一低い共鳴音を出すヴォーカリスト、ヤトハのアルベルト・クヴェジンにカバーしてほしい怪曲です。
「ふたりの星をさがそう」は多少気色が悪いとは言え真面目に大貫サウンドに挑んで居た雰囲気をエンディング近くで台無しにする効果音に思わず笑ってしまいますし、冒頭の「秀吉」は独裁者の怒りのスイッチが一体どこに有るのかが解らず聴いていて戦々恐々の意地悪なユーモアが絶妙です。
なお、「おいしい水」はアントニオ・カルロス・ジョビンのカバーではなく、竹中氏と高橋氏による別作品でした。
非常に癖が有り、達者な歌をカタルシスが生まれる直前で意識的に変にしてしまっている印象が有りますが、曲や演奏は良く、最終曲の後のシークレット・コントも含めて充分楽しめる作品です。
私が初めて見たのは、にっかつから出ていたVHSでした(レンタルでした)。
その後、コムストックの完全版VHSを所有し、それで満足してましたが、このソフトには監督の解説(→85分! で、本編89分と合わせて174分)が入るし、買うことにしました。
ボックスは高くてあきらめました
もちろん映画は最高です。(いまさら説明の必要ないですが)
で、ソフトですが、初回版だけ外箱とポストカードが二枚ついてます。外箱は写真のものとはちがい、グレーの箱で縦長にカットされたヘンリーの写真が入ったデザインです。ポストカードは二枚。
ジャケットと同じものと、リンチが描いたらしい絵コンテのもの。
メニュー画面は未公開のシーンを使っていて凝っています。(タール漬けの
猫⇒グロイ)
特典映像は、それなりに興味深いものです。撮影時の映像等がいくらか見れます。例の舞台のセットを組んでいる画面がちょっとありますが、興味深いものです。(あれは屋外だった!)
そんなわけで、満足でしたが、コムストックのVHSでステレオだった音声がモノラルになっている(あんまり変わらない印象ですが)のと、チャプターがなく、最初から、通しで見ないといけないところは気になります。
画質はすばらしいです。
『イレイザーヘッド』は、監督・脚本・製作・編集を貧乏時代のデヴィッド・リンチ自らが行なった作品である。金が無いときに子供を作ってしまったリンチ自身の心情が表れているようでとても興味深い。モノクロの映像と良いタイミングで入ってくるノイズが、見ている人の感性を侵食していく映画だった。リンチの世界観が好きな方は観た方がいいし、嫌いな方は観ない方が賢明であろう。
リンチ作品は、ホラーより怖く、サスペンスよりも難解で、ヒューマンドラマよりも胸を打つ。そして、作品全体にシニカルな笑いが散りばめられている。皿の上で血を流すチキンや奇形の赤ん坊、ラジエーターの女は、はっきりいって怖い。だが、ヘンリーはチキンや赤ん坊に対して、リアクションを全く取らない。むしろ、愛情を持って赤ん坊の世話をしていたりする。その姿は笑える。この映画を観て「気持ち悪い」という印象しか残らなかった方もいるだろう。それはそれで正解だと思う。それは、観ている人の感受性に問題があるのではない。ただ単にデヴィッド・リンチという人物と自分自身の周波数が合わなかっただけだ。私は、十代後半から周波数が合うようになった。完璧に理解できるというほどではないが、受け入れられるようになった。リンチ監督と周波数が合わない人にはオススメ出来ないが、怖いもの見たさで観たいという方はチャレンジして頂きたい。
この映画で一番気になるのは、あの赤ん坊をどのように製作したのかという事である。リンチ本人も関係者も口を閉ざしたままだ。アレは本当に良く出来ていた。