いまでは嘘のようだが、かつてライトノベルの
タイトルは販売している書店を探すだけでも一苦労だった。都心の某大型書店になけなしの小遣いをはたいて探しにいっても売っていないなんてこともザラだった。そんな時代の富士見ファンタジア文庫の看板
タイトル無責任男シリーズ。朝日ノベルズから再び世に出たことに望外の喜びを感じる。
特にこのアシュラン編は本シリーズの中でも白眉といえる部分で、艦隊決戦はあるは、格闘戦(プロレスファンには垂涎ものの描写らしい)はあるは、陸上市街地戦(戦車戦含む)はあるはで、中高生あたりのライトな軍事マニアにはたまらない出来だった。第二次大戦時の帝国海軍好きならばなおさらである。
皇帝アザリン陛下とイサム=フジとアシュラン三兄弟の三角関係を縦軸に、タイラーシリーズを彩るスターたちがその魅力をいかんなく発揮している。基本コメディであり、出てくるキャラクターも現実には存在出来ないであろう性格と能力をもったいわゆるマンガアニメキャラなんだけれど、なぜかリ
アリティがあって、どっかにいそうと思わせてくれる不思議な深さがある。
自分はアニメで原作を知った派であり、ご多分に洩れず原作タイラーのオッサンくささにショックを受けた身だが、読んでみてどのキャラにも厚みが感じられて、すぐに原作の筆致の虜になった。アニメ版にもアニメなりの魅力(真下マジック)があってとても素敵なんだけれど、おそらくこのアシュラン編の魅力はアニメでは表現できないんじゃないかと思う。うまくはいえないけれど、原作タイラーは表現されていないキャラというか、タイラー世界に生きているだろう人々にもタイラーとのつながりが想像できてリ
アリティを感じさせてくれる。この点がアニメには表現できない優れた点だと思う。(このあとタイラーは大統領にまで出世して全銀河をいろんな意味で巻き込みますし・・・。)世界のだれもがタイラーと無縁でなく、タイラーを通して作品世界の隅々にまで意味が与えられていると言えば良いのかもしれない。しかも、それはタイラー独力では無理な話で、タイラーを取り巻くキャラクターとの関係が相乗効果となって、タイラーに力が与えられた結果なのだ。
全銀河全てに血が通っているような世界を描き出し、その世界の中で名を与えられたキャラが躍動しているSF風艦隊決戦ラブコメディー。それがタイラーである。こんな作品は世界に二つとない。是非ご一読を。
最後に、新たに書き下ろされた新作部分は、声優下野紘さんのファンにはたまらない出来となっている?と思います。少し、いやかなり彼がうらやましいです。
あの宇宙一の無責任男が、スーパーデラックス版になって帰ってきました!
3冊分+α(書き下ろし)で分厚いです。『銀河無責任時代』『
無責任艦長タイラー』『ワングの逆襲』に書き下ろし『汝、臣らに告ぐ……』が収録されています。
タイラー艦長の初期の大活躍が思う存分楽しめます。初期のこのスチャラかでしがらみのないタイラーが好き!という方も多いんじゃないでしょうか。
書き下ろしは、タイラー捕虜時代のパコパコとアザリンとのお話です。
また、イラストは、なんと都築和彦先生によるオール描きおろし(カバーも本文挿絵も)です!
昔のを持っている人も、満足な完全版です。
初めて手に取った人も一気に読めるのでおすすめですよ!
最高です!!タイラーさんの無責任ぶりが微笑ましく、また戦闘シーンもドキドキしながら読みました。 キャラの個性が出ていて親しみやすいなぁ.と思いました。 挿し絵の都築和彦さんのイラストもキャラや世界観と合っていて素敵です。 おすすめです。ぜひ読んでみて下さい!!
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逆境に素直に生き抜いてきた人
順境に素直に伸びてきた人
その道程は異なっても
同じ強さと正しさと聡明さを持つ
ただその境涯に素直に生きるがよい
- - - - - - 松下幸之助 ( 『大切なこと』 )
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藤圭子、本名は阿部純子、昭和27年7月5日生まれ・・・DVDの中で、コンサートの開始直前のナレーションが歌手の「生い立ちのストーリー」を語る。うつむき加減に、1年遅い誕生日のナレーションを聞きながら、カメラ・フラッシュに一礼するデビューしたての藤圭子さん。
しかし、その笑顔には世間に喧伝されたキャッチ・コピー、 「盲目の母とともに夜の巷を流して歩いた薄幸の美少女」 の陰翳(かげ)は全く見られません。
1970年6月、日比谷野音で武田美由紀さんのインタビューに答える藤圭子さんから 現在の私たちが改めて気付かされるのは、「演歌の星を背負った宿命の少女」・・・薄幸な生い立ちと笑顔を失った人生、といった暗いキャラクター・イメージが、「作られた虚像であった」 という事実です。
DVDを何度見直しても、笑顔が明るい、優しくて相手の気持ちが良く分かる、ウイットに富んだ18才なのです。
伝説とさえ言われる、壮絶な「新人歌手・藤圭子売り出しキャンペーン」は、成功裡に語られることが多く、爆発的なセールス実績から見れば事実その通りであって、その興業上の成果に賞賛を惜しむものではありませんが、
歌い手本人が生来持っている人間性を大切にしたイメージの創造でなければ、それを「演じ続けること」に本人が真面目であればあるほど苦しみ、いつしか心の内側から憔悴してゆくのは、自然な成り行きではないでしょうか。
現在歌碑が建つ、
新宿6丁目の 「西向天神社」からスタートした、
新宿25時間立体キャンペーン ( ⇒
新宿ゴールデン街などの繁華街で、デビュー曲 『
新宿の女』 を、ギターを流しながら、一昼夜連続して歌い続ける企画 ) などを通して、藤圭子さんという新人歌手には 「どんな無理をしても」・「生きるために」・「長い下積生活」といったメディアの見出しと共に、「逆境に流され、笑顔を失い、人生の暗渠に沈んだ少女」といった鮮烈なイメージが、容赦なく脚色されました。
そして世間は、美しい圭子さんの、その額に二度と消えることなく刻印された『 虚像 』との ambivalence に瞠目し、圭子さんの濃艶な歌声に、ふつつかに喝采したのです。
決して自ら進んで求めたものではなかった 「流行歌手」 としての浮沈に身を委ねつつ、次々にプロデュースされる「怨歌(えんか)」をあてどなく歌い、移り気な世間に残る滓(おり)のような 虚像 を演じ続ける現実に対して、いつしか『 諦観 』が育まれてゆくのに、聡明な阿部純子さん(⇒本名)にとって、デビューの後、そう長い年月はかからなかったのではないでしょうか。。。
後に、見えないガラスに蔽われた、閉鎖的な社会から 「リセットしたい」 「新しい人生を自分でやり直したい」 と表明し、かねてからの希望であったアメリカという新天地に意を決して旅立っていったのも、明確な自意識に目覚めた、成熟した一人の女性の心の内では、ごく自然な決断であったといえるでしょう。
本来、大変明るく、そして真直ぐな性格の純子さんには、インタビューの中でも 「歌手活動の継続」の質問に対し、「仕事は辛いものだけれど、いいものを作っていきたいと思うし、ここまで育ててくれた人や私の歌を喜んでくれる人のためにも、(歌手は)当分やらなけなければしょうがないでしょう?・・・」と語っているように、既にデビュー当時から「歌手・藤圭子」を客体化して語ることが出来る、確乎とした自己が存在していたように思います。
ドキュメンタリーにおけるインタビューの内容には、司会の
水道橋博士さんがコメントしているように「ガールズ・トーク」の側面もあるのですが、何よりも、ショーにおける舞台やTVの歌謡番組では決して見ることの出来ない 「阿部純子さん」の、のびやかで、ほがらかで、人間性ゆたかな『素』の表情が画面一杯に横溢しています。
このDVDを観た後、「歌手・藤圭子」ではなく、阿部純子さんご自身について印象に残るのは、以下3点です。
1.きわめて頭脳明晰であること
・・・会話の展開が非常にテンポよく進んでいるのは、聡明な純子さんの 明敏な洞察力と的確な判断力、そして柔軟な対応力の賜物であると思います。
2.ゆるぎない自己認識を持っていること
・・・収録時、空前のセールスと人気で歌謡界の頂点にあったにも拘らず、全く「世評」に陶酔することなく、冷静かつ謙虚に自己を見つめています。
3.豊かな「母性」の存在
・・・会話の端々に、女性としての 「生きる力」 のたくましさが溢れています。 まるで、純子さんが持つ 「母性」 の、深さと安らぎを connote するように。
今もなお 純子さんの歌唱に強く惹きつけられるのは、歌い手の燦爛たる生命力が 永遠の「母性」 を私たちに啓示しているからである、と強く感じます。
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『美』について、極めて犀利な審美眼を持つことで著名であった、
ノーベル賞作家・川端康成先生から激賞された、純子さんの、『美』の含有量が濃密な、胸にしみ入るような美しさについては、DVD中の飾らない 自然なたたずまいの中に余すところなく捉えられており、
又、インタビュアーからの様々な問いかけに対する、「回転の速い、当意即妙な受け答えの素晴らしさ」など、本作品は、芳紀十八歳 自らの境涯に素直に生きる純子さんの、輝く笑顔と、可憐な肉声に触れることが出来る貴重な記録となっています。
あらためて、時代を駆け抜けた一人の女性の「花」を映像として鮮やかに切り取った田原総一朗さんに拍手を送りたいと思います。
その後の歌手活動は、広く知られる通り、所属事務所の移籍等々があり、さらに引退、渡米、再デビュー、ご結婚そして愛娘・光さんの誕生などが続きましたが、幾多の困難にもくじけることなく、何よりもご家庭では、「明るくて、少しだけおっちょこちょいなお母さん」 としてアメリカ・
ニューヨークで 愛情たっぷりに光さんを慈しみ 成長を見守った純子さんの、穏やかで、健やかな、今後の幸福な人生を、一人のfanとして、そして一人のsupporterとして、静かに祈っています。
−−−−−−小鳩よ、汝、地上の桎梏より解き放たれ、天高く翔り行くべし
探し求めたる一粒の麦の、愛しき青き芽の生い出でたれば
そも、汝が双つなる翼、今より永久(とわ)に自由にしあれば
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【後記】
レビュー投稿後 3ヶ月余りとなる本日(8月22日)、 大変残念ながら純子さんの訃報に接しました。
明日が恩師・石坂まさをさんの お別れの会 というこの日に亡くなられた純子さんの心痛を思うとき、
言葉がありません。
真直ぐで、純粋な方だったと思います。
純子さんの魂が、あらゆる桎梏より解き放たれ、天国で安らうことを真摯に祈ります。
合掌 ( 2013.8.22 12:30記 )
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