本書は、生活クラブ生協の組合員がお金を出し合い、「緑の基金」から出発して各種ＮＰＯ・ＮＧＯへの助成金となっている「ぐらん」という市民ファンドの紹介です。
読んでいただければわかるように、自分達仲間うちのお金の融通ではなく、外に開かれた助成となっています。
もちろん、公共のお金ではなく、また赤い羽根募金のような半公共的なお金でもないわけですから、出資者達の価値観によるものですが、
なかなか行政がやってくれるのを待っていたら動き出さないけど必要なことを、手弁当で始めた人達を、ほんのひと押しだけど背中を押しましょうという援助です。
なので、介護保険制度によって（持続可能性に赤信号が点灯しているとは言え）公的なサービス供給の枠組みができた高齢者福祉の分野への助成は、あまりみられません。
私がこの本を広く生活クラブ生協員以外の人にも読んでもらいたいと思うのは、別に生活クラブ生協に勧誘したいからではありません。

p.206より
＞日本社会はいま、グローバリゼーションと新自由主義による格差の拡大、エネルギー問題や食糧問題、少子高齢化による社会構造の変化など、前例のない大きな岐路に立っている。そのなかで、社会的なサービスを行う意思と能力をもつＮＰＯを、グローバリゼーションと切り離した社会保障機能のひとつとして、国内で完結した仕組みのもとに位置づけるべきではないだろうか。

p.150より
＞その具体的な姿はまだ明瞭になっていないが、新しい社会制度の一つの重要な側面が、お金の流れをどうするかである。市場での売買を通じた資金の流れではなく、税金と給付による資金の流れでもない、もう一つの余剰資金とニーズを結ぶ経路として、助成が重要になっているのではないだろうか。そして、どうすればそれがうまくできるかが問われているのである。
そうした状況のなかで、ぐらんは一つの可能性を示している。

こういう市民ファンドという考え方を参考に、＜ＡＬＬ税金＞でも、＜ほとんど税金＋保険＞でもないけど、＜まったくの私費で営利団体からサービスを買う＞のでもない、新しい公共へのお金のまわし方について考えてもらいたいのです。
新しい働き方の創出という面から考えるなら、立ち上げ時の支援だけでなく、活動の報酬の底上げも必要なのではないかと思います。

新内閣が掲げた「開国」と「社会保障改革」、本当に何とかして！！！！！と思ってます。
医療・福祉方面に進むべく勉強中の学生なので、また総枠抑制で「とにかく削れ」になったら大変だと心配です。
アメリカでは、自主自律の「小さな政府」が伝統で、保革論争ではそこが争点になるそうですが、
日本は、儒教的な父権温情主義で、「お上に任せておけ。庶民のこともちゃんと考えてやるから」というやりかたで来たのだと思います。
高度成長期はそれでうまくいってたのが、もう先進国に到達したところでグローバリゼーションが進展し、もうそれではやっていけなくなってしまって、今はどうしたらいいのか戸惑っているところなんだと思いますが、
日本人は、結局は、自主自律の競争社会よりも、辛抱しあい、できることをし合って成り立たせる社会を選ぶのではないでしょうか。
保革対立と言っても、辛抱のしあい方・できることのしあい方の中身の話し合い、妥協点を探っての論争にならないと、不毛な争いを続けた挙句に皆一緒に沈没してしまうことになってしまうでしょう。

本書では、北海道グリーンファンドでのグリーン電力への取り組みが語られている。エネルギー問題は環境問題でもあることから、どう環境問題に対処すべきかを提言している。
原子力についての問題点も多く指摘しており、新エネルギーへの移管や、省エネルギーの推進を提案している。
そして、電力を環境の面で評価し選べる社会を提案している。
まだ、それは実現されていないが、まもなく家庭の電力も完全自由化され、電力会社を選べる時代になると思うので、この可能性に期待したい。
また、北海道グリーンファンドは、自然エネルギー普及のため、自ら１０００ｋＷの大型の市民風車をも導入している。そして市民風車は青森、秋田へと広がりつつある。今後の活躍が大きく期待できます。