歴代のメフィスト賞受賞作のなかで最もページ数が少ないのではないかと思われる本作。
自衛隊の基地を舞台に密室に仕掛けられた
盗聴器の謎を巡る一応ミステリーだが、メフィスト賞らしい奇抜なトリックやキワモノ臭は全くなく、いわゆるメフィスト賞らしさがないまともな作品である。後に
直木賞候補になる作者らしい、端正な非常にまとまったデビュー作で、ミステリーというよりは自衛隊内の内情や人間関係をユーモラスに描く方に重点が置かれている。メフィスト賞ファンよりはどちらかというと江戸川乱歩賞ファン向けという感じがする。