読みやすい本です。本書が類書と大きく違うのは'(1)官兵衛の朝鮮の役での動きを詳しく、且つ分かりやすく叙述しています (2)小田原攻め(北条攻め)の講和時に、秀吉に裏切られこの時点で秀吉を見限り、家康を次の天下人へしようと考えはじめたという点です。
'2の論拠は官兵衛が苦労してまとめた講和条件は伊豆、相模、武蔵の三か国領有、証人の交換、北条家嫡男の上洛の三条件でしたが、秀吉は誓約を破棄し三か国を安堵しないばかりか、当主氏政と弟氏照の切腹、嫡男を含めた一族の高野山への追放という過酷な処置を行ったというものです。史実で北条氏の処置は確かにそのようになっていますが、官兵衛が三か国安堵と北条氏存続で講和したというのは初見でした。他の事例では出典が示されていますが、この部分は典拠とした文献が示されていません。
また小田原攻めの時点で官兵衛は隠居して、すでに如水と名乗っていたとしています。家督を息子長政に譲ったのは小田原攻めの前の年天正17年です、しかし「如水円清」と号したのは朝鮮の役で三成たちと対立し勝手に帰国し、剃髪して謹慎したとき、文禄2年であると通常されているので小田原攻めの3年後です(なお本書の巻末年表では如水と改名が天正17年、剃髪し円清と号したのが文禄2年としている)。
魅力的な新説ではあるので黒田家譜以外の文献に拠っているなら、この辺りを文献含め典拠など詳述してもらうと説得力が増したと思います。
この本は決して悪くはありませんが、物足りなさを感じます。
本のページ上半分が年表、下半分が出来事の解説になってます。下半分の更に下にちょろっと歴史上の人物の名前が載ってます。
年表と言っても、日本史世界史がごちゃ混ぜです。紙面の関係で仕方ないかもしれないが、もう少し考えて欲しかったです。
そして、下半分の出来事の解説だが、上半分の年表で太字になっているものだけが解説してあります。
太字以外は何の解説もないです。自分で調べればいいんだろうけど、解説するものとしてないものとの違いがよく分からないです。
例えば、1853年で太字になっているところは、教科書には必ず載っている「ペリー来航」と、「アメリカでジーンズが発売される」というもの。
どうせなら、「クリミア戦争」の解説も欲しかったですね。これも1853年です。
また、1889年の人物のところに、「チャッ
プリン誕生」と書いてあるが、何で「ヒトラー誕生」が書いてないのか?
悪くはないが、少々物足りなさを感じました。もう少しページ数を増やして改訂版でも出すべきですね。
同様の書籍が他社からも出ていますが、それと比較するとわかり易い(同時系列として)表示方法だと思いました。より深く広い記述を望まれる方には頁数の都合で物足りなさを感じられるかもしれませんが、ざっとの「おさらい」として、又は旅先で遺構や歴史的文物に触れられた時の参考文献としては充分だと思います。