当初、記者向けツールとして作成されただけあって、薄くて
コンパクトでありながら文字は大きめで表紙はラバー
コーティングされており耐久性があります。
ROE・ROAなど主要な用語については半ページ以上を使って詳しく解説されており、初心者にはちょっとした参考書になりそうです。
非常に手に馴染む為、いつも傍におきたくなるツールです。
本書は、英国の
ロンドンにあるロイター通信に共同通信から出向していた記者が執筆したもので、ロイター通信の創設者であるユーリウス・ロイターの一代記及びその後のロイター通信の略史を扱っている。ロイター通信を設立したのは、
ドイツ生まれのユダヤ人である。彼の人生は、波乱に満ちていた。キリスト教に改宗した彼は、19世紀半ば、
ドイツから
パリに事実上の「亡命」をしている。当時の
パリには、圧政の
ドイツを嫌って、多くの亡命
ドイツ人がいたという。その一人として
パリにやってきたロイターは、語学を生かして世界初の通信社アバス通信に就職する。だが、数ヶ月で退職して、自ら通信社を設立する。しかし、失敗。夜逃げ同然に
パリのアパートを後にする。その後、仏独国境地帯で通信社を設立するものの、うまくいかず、未だ電信が完備していない
ロンドンに渡る。35歳の時であった。
ロンドンに渡ったことが、彼を成功に導くことになる。しかし、
ロンドンで通信社を設立するものの、事業が順調に伸びていたわけではなく、紆余曲折を経て現在のロイター通信になった。
ドイツ生まれでありながら、英国に帰化したロイターは、戦争が起こると、戦争の両当事者に特派員を送り戦争を報道した。戦争報道の中立性と敏速性で、ロイター通信社の名声は徐々に上がっていった。ボーア戦争では、英国軍から英国政府への戦況報告よりも迅速に、ロイター通信者の特派員は、戦果を
ロンドンに伝達した。ロイター通信社は大英帝国の目であり耳であった、といわれるようになったのも、このような歴史があったからであろう。第二次世界大戦では、英国政府がロイター通信を御用通信社にしようという企てを跳ね除け、現在の通信社の基礎を築いたという。本書は、ロイター通信の創設者のロイターに焦点を当てているため、現在の世界の国際通信社の歴史は、対象外となっている。その分、あとがきで多少の補足はあるものの、物足りない感がいなめない。が、ロイター通信の成立ちを知る上では非常に参考になる書籍といえよう。(2009/8/24)