本編の「一方、その頃…」的な話で、本編では出番の少なかったエリとカレン先輩がメインで、 藍華もそこそこ出番はありますが、エリと藍華の掛け合いも復活です。 また、カレン先輩がかつて無いほどに暴走します。
ホワイトナイツは殆ど出番がありませんが、本編では台詞の少なかった E.T.A.I.がよく喋りますし、美由役の後藤邑子さんが珍しくツッコミ役に転じるのも 面白かったです。
ただ、ハーゲン兄妹は登場しません。
この独特の文体、最初はとっつきにくいのですが、 一度入り込んでしまうと不思議と癖になります。 なんだかずっと浸っていたいような、 ページが減っていってしまうのが惜しいような、 そんな気持ちになるのです。
登場人物の名前も変わっていて、 一見「美」を追求したファンタジックな物語を 予感させるのですが、描かれている内容は けっこう生々しい「現実」ばかり。
師匠にかなわぬ恋をしてしまったことから始まる 「踊り」との腐れ縁、踊りの流派の対立と衰退、 そして物書きとして身を立てたいと思いつつ、 それがかなわぬ現実への焦燥・・・。 主人公の視線は常に冷静で客観的で、 スパッと切れるナイフのよう。 その鋭い視線で他者を、自分自身を、 思いでを、風景を、切り取っていきます。
幼いころひとりで童話を読んだ記憶。一語一語言葉の意味を確認しながら読んでいた幼児に戻ったような妙な既視感を覚えた。
すらすら読み進むというわけには、とてもいかない。 でも作者の意図はそこにあるんじゃないかな、とふと思った。「すらすら読み進んでほしくない」と。 たとえば「盆提灯」を「しるべにつるすしきたりのあかりいれ」と書いている。 「盆提灯」は読み手の中ににすでにある固定化したイメージが出来上がっているが、その固定化してしまったイメージをいったん白紙のまっさらな状態に戻し、言葉の意味を新しく再生させる意図があるのかなとも思った。
「ちょうどたましいぐらいに半透明に、たましいぐらいの涼しさをゆれたゆたわせた」 盆提灯を表現した文章だが、美しいなと思う。
ページを繰る手が止まらなくて一気に読めてしまう小説は最高だけど、ゆっくり読みながらじわじわと自分の中でイメージや意味が醸成されていくような小説、こんな小説があってもいいと思う。
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