個人的には、この辺りから徐々にCDチャートに疎くなってしまった世代であるが、そのような中でも本盤は格別に印象的に残っている。或る日に
彗星の如くデビュー&スマッシュヒットを飛ばしたELTであったが、やはりメロディーの美しさは秀逸だった記憶がある。コンピューターサウンドという所謂「打ちこみ系」に頼ったにも関わらず、それを払拭するような美旋律は流石コンポーザー五十嵐充だと当時実感したものだ。
今のELTと比べるとその音楽性は、随分異なると感じるが、やはりその鍵を握っていたのが五十嵐氏の脱退に因る所が大きいだろう。どちらのサウンドが好みかは各々の趣向によって異なろうが、私の場合は、やはり本盤に代表される初期のサウンドが好きだ。デビュー間も無い頃だけに、素のままの歌唱をみせる持田や、既述の通り実に魅せる五十嵐サウンドを響かせてくれるのが主因だ。
そして他でも書かれている通り、ELTの素晴らしい所はアルバム曲であっても魅力的な曲、特にメロディーが美しい曲が多い部分だろう。シングルとの抑揚の兼ね合いで、敢えて抑え目でアルバム曲を製作する歌手も多いが、ELTのアルバム曲は
バラードで名曲が多い事から、アップテンポが多いシングルを引きたててもいるし、アルバム全体的なバランスも同時に取れていると感じる。
そのような意味で、♪6や♪9の刹那系
バラードは秀逸であるし、五十嵐・持田の他、guitar伊東のプレイがこれらの曲で良いスパイスになっているのも確かだ。結成当初五十嵐は、「打ちこみサウンドをメインとする故に無機質サウンドになるのを危惧して、学生時代バンドを組んでいた伊藤を誘った」とのコメントをしていたが、見事にその目論みは成功したと見るべきだろう。伊藤氏のギターサウンドは、どちらかと言えば線が細いサウンドであるが、逆にそのセンスが♪9のラストフェードアウトするギターが何ともいえず感傷感を増幅させるエッセンスとなっているのは確かだ。
次作同様、本作でも♪7で打ちこみ系インストを披露し斬新的である。また続くアップテンポな♪8との繋ぎも絶妙だ。
当時は、良く
ウォークマン(カセット)で聴いた物だ。当時カセットは最終世代だったと記憶している。MDやMP3プレイヤーに取って代わった今となっては、思いで深い記憶でもある。
メロディーの美しさと切な系サウンドという観点では、間違い無く名盤だろう
リリース:1997年