暫く、川又千秋氏の架空戦記からは遠ざかっていましたが、これは圭作です。
まず、
戦艦武蔵の逆襲。これは、栗田艦隊謎の反転、をベースにレイテ湾突入を
実現させる、という巧い設定。若干、佐藤大輔氏の「征途」に似たところも散見
されるものの、主力と切り離された武蔵が独自行動で志摩艦隊と合流、という
ところがお見事です。文体もラバ空時代から全くブレていません。
そこで大和は空振りで本土に戻るわけですが、その後の菊水作戦を弄ったのが
大和戦闘機隊始末記。ネタバレはしませんが、ラバ空の読者なら思わずニヤっ
としてしまう設定。こちらはもう少しフネそのものを追って書いてもよかったと
思います。付録資料部分のボリウムからすると、こちらは実戦記なので、文献
や小説も多いし、ネット上にも種々読めるものがありますので。
ラバ空を、少々強引に「翼に日の丸」で丸めこんで完結させた筆者ですが、ブレ
ない文体の面白味と感嘆詞の使い方等は、ある意味、懐かしさを感じる1冊です。